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ポケモン 揺れる平和公園 GO配信1週間 被爆者憂慮 騒音通報も

夜に若者集結/ドーム周辺で「バトル」

 夜の平和記念公園(広島市中区)にスマートフォン向けゲーム「ポケモンGO(ゴー)」を楽しむ若者たちが連日、詰め掛けている。アイテムが入手できるポイントが集まる原爆ドーム周辺などは特にプレーヤーで混雑し、平和を祈る場で「バトル」も繰り返されている。ゲームの配信から29日で1週間。記者が夜の公園を歩いた。(滝尾明日香、川村正治)

 27日午後8時すぎ。元安橋の歩道には、スマホをのぞき込む若者やスーツ姿のサラリーマンたち約200人が集まっていた。車道に足を投げ出してプレーする人も。周辺にはアイテムが入手できる「ポケストップ」と呼ばれる地点が密集し、南区の主婦(33)は「アイテムがもらえるスポットが他の場所よりも圧倒的に多い」。娘2人と熱中していた。

 「元安橋周辺は珍しいポケモンが出現しやすいというネットの書き込みを見た」と明かしたのは東区の会社員男性(29)。平日は毎日、会社帰りに立ち寄る。

 世界遺産の原爆ドームや原爆の子の像周辺は、ポケモン同士が戦う「ジム」もある。若い男女が立ち止まり、画面上のバトルに励んでいた。

 午後9時半ごろ、広島県警のパトカーが巡回に。「歩道に上がって」「駐車中の車を移動させて」などとマイクで呼び掛けた。公園を管轄する広島中央署には24~29日に「人で混雑し、歩道や車道の通行の妨げになっている」「騒々しい」など30件の通報があったという。

 通報は夜から未明の時間帯に集中。同署は路上駐車の取り締まり強化に加え、公園を通り抜ける元安橋と本川橋を結ぶ市道について、車の夜間通行止めも検討している。

 この日は、平日にもかかわらず深夜まで人が絶えることはなかった。広島市は「慰霊の場にふさわしくない」として公園内の施設をポケストップや対戦場所から外すよう開発を主導した米国の業者に要請している。帰宅中の会社員女性(27)は「場所によっては配慮が必要。業者は指定から外す対応が必要なのでは」と理解を示した。

 平和記念公園を毎日、清掃する佐伯区の胎内被爆者の石見洋二さん(70)は「厳粛な雰囲気の中で平和を祈る場。ムードを壊すのはよくない」と話していた。

(2016年7月30日朝刊掲載)

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