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演劇で問う「平和」 広島の沼田・舟入高 ひろしま総文で上演へ

 「原爆の日」を前に広島市安佐南区の沼田高、中区の舟入高の両演劇部が、被爆者や遺族の心情を通じ、平和の尊さを訴える創作劇に挑んでいる。8月1~3日、中区のJMSアステールプラザである全国高校総合文化祭演劇部門で披露する。

 沼田高の58人が発表する「そらふね」は原爆投下の10年後、1955年の広島が舞台。20代の姉妹を主人公に、生き残った人たちの苦悩に焦点を当てる。脚本は顧問が書き下ろした。

 「あんただけ、なんで生きとるん」。被爆死した女学校時代の同級生の母親にぶつけられた一言に苦しむ多恵子と、寄り添う姉昭江のやりとりの中に「うちはみんなを踏みにじって生きてきたんよ」との葛藤がにじむ。昭江役の3年久崎愛穂(まなほ)さん(18)は「生き残った人たちが苦しみに耐え、努力を重ねたからこそ、私たちの世代に命がつながっていると気付いた」と受け止める。

 稽古を始めた昨年9月、部員全員が近くに住む女性被爆者と会った。演出に生かそうと、被爆当時の惨状を聞いたり、戦後の暮らしぶりを尋ねたりした。河野隆史部長(18)は「涙を浮かべて話す姿を思い出すと、被爆者の気持ちをきちんと表現できるか怖くもある。でも、僕たちなりに伝える努力をした成果を届けたい」と意気込む。

 舟入高の21人は被爆前の人々の営みに向き合う。小中高時代を広島、山口両県で過ごした作家周防柳さん(51)の小説「八月の青い蝶(ちょう)」を原作に、少年が年上女性に寄せた恋心を描写する。

 森本綾乃部長(17)は「10代が身近に感じられるテーマ。だからこそ原爆が奪ったものの大切さが分かる」と強調。全国12校が参加する総文祭での上演で「同世代と一緒に、平和について考える機会にしたい」と話す。

 沼田高の上演は1日午前10時10分、舟入高は同日午後4時40分から。無料。(奥田美奈子)

(2016年7月31日朝刊掲載)

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