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寄せ書き日章旗 邑南帰還 戦死の竹崎さん遺族「やっと故郷に」 米NPO、入手経緯を説明 島根

 太平洋戦争の戦地に赴き、23歳で戦死した邑南町出身の旧陸軍中尉、竹崎忠人さんが所持していた日章旗の寄せ書きが31日、71年の歳月を経て遺族の元に戻った。米国オレゴン州に本部があるNPO法人「OBONソサエティ」が、忠人さんのおいの竹崎亘さん(76)=同町布施=に届けた。(城戸昭夫)

 旗は縦73センチ、横86センチ。「祝入営」とあることから忠人さんが入隊した1943年末から44年の物とみられる。白地部分に39人の署名があり「忠君愛国」「突撃へ」など、はなむけの言葉が書かれている。

 同法人から親族に寄せ書きが返されたのは中国地方で初めて。地元の西善寺であった返還式には、亘さんや忠人さんの妹2人を含め計10人が集まった。同法人の広報捜索担当、工藤公督さん(41)が亘さんに旗を手渡し、入手した理由や忠人さんを特定した経緯などを説明した。

 工藤さんによると、米国ニュージャージー州の男性が親族の遺品の中から発見し、返還を申し出た。名前から旧満州(中国東北部)で上司や同僚が書いたものと特定。忠人さんは満州から台湾を経由し、フィリピンのレイテ島を奪還するため45年7月に上陸し、攻撃中に戦死したらしい。

 親族の手元には位牌(いはい)だけで、遺骨や遺品はない。親族は茶色に変色した寄せ書きに両手を合わせ、涙ぐんだ。亘さんは「少ししか覚えていないが、おじは大きい人だった。長い間さまよい、ようやく故郷に帰って喜んでいると思う」と感激していた。

(2016年8月1日朝刊掲載)

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