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早期発効の声高まるCTBT 機構準備委のトゥンボリ報道官に聞く

被爆地の声 発信継続を

 (ウィーン発 田中美千子)オーストリア・ウィーンで開催中の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の第1回準備委員会では、北朝鮮による3度目の核実験が懸念される中、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効を求める声が各国から相次ぐ。ウィーンに本部を置くCTBT機構準備委員会のアニカ・トゥンボリ報道官(47)に、発効の見通しや日本の役割を聞いた。

 ―北朝鮮の動向をどう受け止めますか。
 CTBTは世界のほとんどの国が署名し、いずれの国も核実験の禁止規定に縛られている。北朝鮮は国際社会と同じ道を進み、他国と同様の義務を負うべきだ。3度目の核実験はあってはならない。

 ―核実験が実施された場合、探知できますか。
 世界285カ所で、準備委が設けた地震波などの観測施設が稼働している。北朝鮮による2006年、09年の核実験をいずれも探知し、加盟国に位置、時間などの情報を実施2時間以内に提供した。施設は当時より増設しており、どこで核爆発が起きても対応できる。

 ―発効の見通しは。
 まだ数年はかかるだろう。米国が批准するかどうかが鍵だ。そうなれば未批准国の残り7カ国が後に続く、との見方は強い。しかし、7カ国は米国の陰に隠れてはいけない。スリランカは12年2月、核保有国が先に批准すべきだとの主張を転じ、批准に踏み切っている。

 ―発効に向け、日本に何を求めますか。
 広島、長崎は核兵器の恐ろしさを伝え続けてほしい。誰も代わることができない役割だ。被爆地の市民の声は、世界各国に働き掛ける力がある。CTBTも1950年代から続く平和運動なしには動かなかった。核兵器廃絶に向け、被爆地は常に前線に立ち続けてほしい。


包括的核実験禁止条約(CTBT)
 核爆発を伴うあらゆる核実験を禁じる条約。1996年に国連総会で採択され、183カ国が署名、157カ国が批准。発効には研究・発電用の原子炉を持つ44カ国の批准が必要だが、米国、中国、エジプト、イラン、イスラエルは未批准。北朝鮮、インド、パキスタンは署名もしていない。オバマ大統領はブッシュ前政権の方針を転換し、批准を目指すと宣言した。一方で米国は臨界前核実験や核実験場を必要としない新しいタイプの実験を続けている。

(2012年5月11日朝刊掲載)

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