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北朝鮮に「核実験自制を」 NPT準備委が閉幕

 (ウィーン発 田中美千子)オーストリア・ウィーンで開かれていた核拡散防止条約(NPT)再検討会議の第1回準備委員会は11日、2週間の全日程を終えて閉幕した。北朝鮮の3度目の核実験の懸念が高まる中、準備委は「北朝鮮の核開発計画はNPTへの挑戦」と表明。核実験の自制と核兵器の放棄を強く求めた。

 北朝鮮をめぐっては、国連安全保障理事会の米国や中国などの5常任理事国が、核実験を行わないよう要求する共同声明を発表。日本、韓国をはじめ、各国が核兵器の完全放棄や人工衛星と称する弾道ミサイルの発射問題の解決を迫った。

 また、2010年に開かれた前回の再検討会議で合意した64項目の行動計画を着実に進める必要性を強調。福島第1原発事故を受け、原子力施設の安全強化も確認した。

 ピーター・ウールコット議長(オーストラリア国連大使)が11日、こうした議論の内容を盛り込んだ議長総括をまとめた。

 4月30日に始まった準備委では「核軍縮」「核不拡散」「原子力の平和利用」などのテーマごとに議論。各国が近年の取り組みや意見を表明した。広島市の松井一実市長と長崎市の田上富久市長が公式行事で核兵器廃絶を訴えた。

 準備委は15年の再検討会議まで計3回あり、第2回は来年春、スイス・ジュネーブで開かれる。

NPT準備委が閉幕 核軍縮へ踏み込み不足 保有国と非保有国 議論かみ合わず

 北朝鮮による核実験の懸念が高まる中で開かれた2015年のNPT再検討会議の第1回準備委員会。世界の核不拡散体制が深刻な挑戦を受けているにもかかわらず、核兵器保有国は核軍縮に向けた新たな動きをみせることはなかった。目に見える形での軍縮を迫る非核保有国との議論はかみ合わず、双方の意識の違いが浮き彫りになった。

 10年の前回の再検討会議は「核兵器のない世界」の実現に向けて合意し、64項目からなる行動計画を掲げた。今回の準備委は、加盟国の取り組みを初めて確認する場だった。

 核軍縮をめぐる議論で、米国やロシア、中国など国連安全保障理事会常任理事国である核保有5カ国は、既に公表済みの内容の説明に終始した。

 特に米国は、ロシアとの新戦略兵器削減条約(新START)を昨年発効したと胸を張った。しかし同条約の対象外となっている射程の短い戦術核の削減交渉でロシアは慎重な姿勢を崩さず、手つかずのままだ。保有国はどこも、「核兵器のない世界」に向け踏み込んだ取り組みを示すことはなかった。

 「不拡散体制を確立するにはまず保有国が軍縮を進めるべきだ」「トータルの核兵器数はまだ何千もある」。非核保有国からは不満の声が相次いだ。

 日本は存在感を示したとは言い難い。削減数などを報告するための用紙「標準フォーム」を作り、使用を呼び掛けていることを説明したものの、保有国に核軍縮を強く迫る発言はなかった。

 外務省関係者は「終始円滑に進行したが、裏返せば盛り上がりに欠けたということ。多くの国は様子見だった」とみる。

 傍聴した長崎大核兵器廃絶研究センター(長崎市)の中村桂子准教授は「各国は次の再検討会議に向けて前向きな機運を崩すまいとの姿勢だった。大事なことだが結局、核をめぐる問題が先送りされた」と指摘した。

(2012年5月12日朝刊掲載)

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