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「なぜ原発」 福島で問う 海外に被爆瓦送る広島の嘉陽さん

 広島の被爆瓦を海外の大学に送る活動を続ける広島市西区の嘉陽礼文(かよう・れぶん)さん(34)が、福島第1原発事故の背景と影響を探ろうと、15日から福島市で暮らす。福島大で半年間学びながら原発周辺で除染作業に参加する。3月まで広島大大学院で憲法を専攻した嘉陽さんは「なぜ被爆国が原発大国になったのか探りたい」と話す。

 大学院で学びながら勤務した行政書士事務所を休職。福島大で政治学の科目履修生として原発誘致に絡む地域や政治の動きを研究する。その傍ら、建設会社で働き除染作業に従事する。「事故が何を奪い、地域をどう変えたのか、この目で確かめたい」

 沖縄県浦添市出身の嘉陽さんは沖縄戦を生き延びた祖母に平和の大切さを教わった。中学の修学旅行で中区の原爆資料館を見学、焼け焦げた被爆瓦に衝撃を受けた。それが広島大進学につながった。

 「ヒロシマの記憶を世界の若者に伝えよう」と被爆瓦を海外の大学に送り始めたのは約3年前。広島市の許可を得て原爆ドーム(同)近くの元安川などで集めた。原爆で壊滅的被害を受けた広島大に戦後、教材や苗木を提供した海外22大学に「返礼」の気持ちも込めて送っている。

 この活動が新たな縁を結んだ。被爆瓦を受け取った米ノースカロライナ大の副学長が感激。昨年11月、原発事故からの復興策を研究する福島大に、被爆後の広島大と同じように木と辞典を贈った。

 広島と福島をつなぐ一端を担った嘉陽さんは今冬、ノースカロライナ大も訪れる。「自分の言葉で核の怖さを伝えられるよう蓄積を増やしたい」と話す。(下久保聖司)

(2012年5月13日朝刊掲載)

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