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[オバマ米大統領を迎えた夏] 「2人」に押され大役へ 広島の下村さん あすメッセージ

間近に聞いた演説/被爆者の祖母急死

 広島市中区の吉島中3年下村めぐさん(14)が5、6の両日、広島を訪れる各国の大使や外国人旅行客に平和を願うメッセージを伝える。その背を押すのは2人。一人は平和記念公園(中区)での演説を間近に聞いたオバマ米大統領。もう一人は、7月に82歳で急逝した被爆者の祖母晏子(はるこ)さんだ。(久保友美恵)

 「私は5月27日、オバマ大統領の広島訪問の式典に参加し、歴史的な日に立ち会うことができました」

 下村さんは今、英語のスピーチ練習に余念がない。5日は市の平和記念式典に出席する各国の大使と対面しメッセージを読み上げる。6日は、式典会場で外国人参列者にその英文を印刷したカードを手渡す。市教委の作文募集を経て選ばれた20人の1人だ。

 メッセージを考え始めてから約1カ月後、オバマ氏の訪問行事に招かれた。「演説や振る舞いから歴史的事実を知る勇気を持ち、行動する大切さを感じた」。素直な思いを書き込み、7月9日に仕上げた。

 同居していた晏子さんが亡くなったのはその2日後。直腸や肝臓のがんを乗り越えたが、6月に転倒して足を骨折。入院後、肝臓などを悪くしていた。

 メッセージの後半に、中島国民学校(現中島小)5年の時に被爆した晏子さんの体験を盛り込んでいた。「原爆が投下され、少し前に話していた先生がいなくなった」「焦土の上を走って、市役所までおにぎりを取りに行った」…。そして「祖母が過ごすはずだった楽しい子ども時代を奪った戦争は、二度と起こしてはならない」と続けた。

 登校中に被爆した晏子さんは、髪が抜け血便も出たという。大好きだった7歳上の兄も原爆で息絶え、家族で遺体を河原で焼いた。下村さんは昨年、何げない会話の中で初めて聞いた。

 祖母に見せることがかなわなかったメッセージはこう結んだ。「まずは身近な誰かのことを、そしてヒロシマのことを、もっと知ることから始めませんか。私たちの行動で平和な世界への扉を開きましょう」

 6日は下村さんの15歳の誕生日。毎年笑顔で祝ってくれていた祖母のため、世界に「あの日」が二度と訪れないよう願い、届ける。

(2016年8月4日朝刊掲載)

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