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近隣市町 反応さまざま 上関原発埋め立て延長許可 上関町長は評価に慎重 山口

 中国電力が上関原発を建設するために申請していた公有水面埋め立て免許の延長で、山口県が延長を許可した3日、建設予定地の上関町とその周辺市町の首長や議長も関心を持って受け止めた。県議会の各会派の賛否は割れ、村岡嗣政知事に対して許可に至った経緯を県議会で説明するよう求める声が相次いだ。

 「工事再開へスタートを切ったのは事実だが、いきなり何かが変わるわけではない」。上関町役場で記者会見した柏原重海町長は、県の判断を淡々と受け止めた。原発再稼働を優先する国の動向を踏まえて「『進めてもらいたい』と言っても、私が動かせるものではない」と慎重に言葉を選んだ。

 隣接する柳井市は、市役所のある市中心部が上関原発建設予定地の半径30キロ圏に含まれる近さだ。井原健太郎市長は「市民の関心も高い。県と中電の今後のやりとりをしっかり注視する」とした。

「適切な判断」

 周防大島町の椎木巧町長は「適切な判断」と評価した。原発新増設で国の方針は示されていないが「いつまでも判断を先延ばしできない。県は要請書も出しており、すぐに工事が再開するわけでもない」と受け止めた。

 福島第1原発事故直後の2011年5、6月、周南、下松、光の3市議会は、上関原発の建設中止や原発の新増設計画の凍結などを求める意見書を可決した。周南市の兼重元議長は「福島第1原発事故の衝撃は大きかった。上関原発の新設が今後動きだすならば、さらに慎重な議論が必要だ」と指摘した。

 下松市の浅本正孝議長は「意見書をまとめた当時と市議会の姿勢は変わっていないが、県も熟慮を重ねて判断したのだろう」と一定の理解を示した。市域の多くが予定地の30キロ圏内にあり、中電には「丁寧な説明を求めたい」と注文した。

議連が抗議文

 「上関原発建設計画に反対する2市4町議会議員連盟」(会長・渕上正博山口県平生町議)は3日、抗議声明文を出した。これまでの県の対応を「違法」とし、許可の背景に「安倍政権の上関原発新規立地への強い姿勢が見える」と主張している。

山口県議会 説明求める声 各会派の賛否割れる 上関原発埋め立て延長許可

 山口県議46人のうち半数の23人を占める最大会派の自民党の新谷和彦会長(萩市・阿武町)は「県の考え方をよく聞きたい。良い悪いではなく今後の推移を見守る」と受け止める。公明党(5人)の小泉利治会長(宇部市)は「知事が決めたことなので、考えを尊重したい」とした。

 自民党新生会(5人)の吉井利行氏(上関町・田布施町・平生町)は「国のエネルギー政策がはっきりしない限り、上関原発の建設工事はできない」とした上で、「許可判断で半歩か一歩か分からないが前進だ」と評価した。

 県は許可と同時に、原発本体の着工時期の見通しがつくまで埋め立てないよう中電に要請した。民進・連合の会(4人)の西嶋裕作会長(山口市)は「実質的に許可なのか不許可なのか、はっきりしない」と批判。社民党・市民連合(2人)の佐々木明美会長(宇部市)は「県の対応は支離滅裂。県議会で追及していく」とした。

 共産党(2人)は許可に抗議する声明を発表。木佐木大助会長(下関市)は「原発回帰を進める安倍自公政権の意をくんだ政治的な判断だ」と指摘した。

(2016年8月4日朝刊掲載)

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