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世界2万4000人 ヒロシマ学習 スカウトジャンボリー

最大規模 資料館見学や式典参列

 2015年夏に山口市で開催されるボーイスカウトの世界大会「世界スカウトジャンボリー」で、世界161の国・地域のスカウトたち計2万4千人が平和学習のため広島市を訪れる。ボーイスカウト日本連盟は「平和のメッセンジャーになってほしい」と期待。原爆資料館(中区)は「これほどの規模の平和学習は聞いたことがない」としている。(荒木紀貴)

 ジャンボリーは山口市のきらら浜で15年7月27日~8月8日にあり、各国の14~17歳の男女スカウトが参加。キャンプ生活を送りながら環境、平和、開発の3分野を学習する。

 日本連盟は、環境と開発の分野についてカルスト台地で知られる秋吉台や瀬戸内海沿岸のコンビナートなど山口県内での活動を検討する。一方、平和学習は被爆地を舞台に計画。中区の平和記念公園や資料館を見学し、被爆体験記の朗読を聞いて平和の実現に何ができるかをスピーチする活動を予定する。

 人数が多いため、1日4千人ずつがバスで山口市から日帰り訪問。7月30日~8月1日と同3~5日の計6日間かけ全員が広島入りする。うち200人は6日の平和記念式典にも参列する。

 資料館によると11年度、修学旅行シーズンの10月で1日平均の団体入館者数は約2500人。4千人が連日訪れる平和学習は異例の規模となる。混雑が予想されるため、日本連盟は広島市などに協力を要請。松井一実市長は全面協力をする考えを示している。

 ジャンボリーでの平和学習は初めてで、15年は被爆70年に当たる。米国からも参加するため、主催する世界スカウト機構(本部・ジュネーブ)には「原爆を投下した米国と被爆国の子どもが一緒に広島に行くと憎しみがわくのでは」と懸念の声もあった。

 だが機構の役員が10年と11年に広島市を訪問。資料館の展示を見て「ヒロシマの心が伝わる」と了解した。

 ボーイスカウト広島県連盟の阿部芳行事務局長は「核兵器廃絶を訴える被爆地の願いを知り、それぞれの国で何をすべきかを考えてほしい」と期待する。

世界スカウトジャンボリー
 4年に1回、世界各国のボーイスカウトたちがキャンプ生活を送りながら交流を深める。これまでに22回開かれ、国内での開催は1971年の静岡県以来、44年ぶりとなる。世界スカウト機構には、発祥国の英国をはじめ161の国と地域が加盟。中国(香港やマカオは除く)や北朝鮮は加盟していない。

(2012年5月17日朝刊掲載)

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