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江田島市大柿の深江老人クラブ連合会 久保会長 被爆体験を語る決意

核なき世界 灯籠に願い

 江田島市大柿町の深江老人クラブ連合会は、6日夜に原爆ドーム(広島市中区)近くの元安川に流す灯籠8千個を仕上げた。オバマ米大統領の広島訪問後、初の原爆の日。会員唯一の被爆者久保久安会長(86)は「核兵器がない世界の実現に向けて動き始めた年。その願いを灯籠に込めてほしい」と呼び掛けている。(貞末恭之)

 連合会は1993年から、灯籠作りを請け負っている。ことしも3月から、会員25人が寄り合って、手作業で作った。サイズは約15センチ四方、高さ約30センチ。木の骨組みに色紙をかぶせる。

 久保さんは71年前のあの日、旧国鉄職員として広島市南区松原町で働いていた。翌朝たどり着いた中区河原町の自宅は既に焼失していた。「市中心部は跡形もなかった。あの光景は忘れられない」

 10年前、連合会の会長を引き受けた。ここ数年はがんと闘ってきた。「元気なうちは考えたこともなかったが、病気が見つかるたびに被爆の陰が頭をよぎる」という。一方、連合会は幼い頃の戦争の記憶があいまいな70代が多い。

 「体験を語らなければいけないと思い始めた。原爆について知らなければ、灯籠作りの意義も薄れるのではないか」。久保さんは、連合会などで今後、自らの体験を語る機会を探す。

 灯籠は6日早朝、トラック2台に積み込み、会場へ送り出す。

(2016年8月5日朝刊掲載)

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