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福島復興へ被爆地の知恵 広島でシンポ

 福島第1原発事故からの復興を考えるシンポジウム「放射線災害復興の道―広島、長崎から福島へ」が17日、広島市中区の広島国際会議場であった。放射線による人体影響の知識を蓄積した被爆地が果たすべき役割や課題について、5人の研究者が意見を述べた。

 5人は、広島大原爆放射線医科学研究所(原医研)の神谷研二所長や、元放射線影響研究所理事長の長瀧重信長崎大名誉教授ら。被曝(ひばく)が健康だけでなく、人の心や社会に大きな影響を与えることや、科学的な知識に基づいた対応の必要性などを指摘した。

 神谷所長は、広島大が延べ千人を超す緊急被曝医療チームを福島県に派遣したことを紹介。福島では低線量放射線の人体影響が懸念されているが、広島、長崎の被爆者の研究でも科学的には十分解明されていないことを課題として挙げた。

 長瀧名誉教授は、チェルノブイリ原発事故による影響調査の経験を基に、福島復興に向け「全ての情報と、科学に基づいた説明を示し、住民と対話を重ねながら今後の対策を決めることが必要」と力説。温かい被曝者援護の模範を被爆地から世界に示そうと訴えた。

 シンポは、この日始まった日本口腔(こうくう)科学会学術集会の市民公開講座として開かれた。約700人が耳を傾けた。(宮崎智三)

(2012年5月18日朝刊掲載)

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