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社説・コラム

天風録 「「祈る」平和」

 庄原市の西城小で、児童会が「おりづる教室」を始めたという。本紙ヤングスポット欄に今週、6年生がつづっていた。教える方も教わる方も、笑みがこぼれるのがうれしい、と。そう感じ取れる心ばえがまたうれしい▲折鶴(おりづる)にいのち吹き込む原爆忌(平岡しづこ)。広島の平和記念公園に持ち込まれる折り鶴が一昨年、昨年と1300万羽を超えた。手作りの4羽を携え、広島を訪れたオバマ米大統領の逸話が知られたことしは、さて▲注文の品が焼けるまで、鶴でも折りませんか―。そう呼び掛け、色紙を置くお好み焼きの店が広島都市圏に20軒ほどある。市民グループ「待っとる間(あいだ)に鶴折る会・ヒロシマ」が始めた運動はこの夏で、はや20年になる▲ジューと音が上がり、香ばしい匂いが立ちこめる鉄板を横目に、真四角な紙を三角にしたり、ひし形にしたり。何分間か、一心に指を動かす。どこか、禅僧が心のちりを不断に洗い落とそうとするたしなみを思わせる▲どの日にも増してきょう、千羽鶴の束が手向けられよう。「原爆の子の像」に、原爆ドームに。INORU(祈る)の中にORU(折る)の3文字がある通り、心込めた折り鶴は祈りの場にふさわしい。

(2016年8月6日朝刊掲載)

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