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毒ガスの苦しみ共有 イラン被害者4人 大久野島を訪問 竹原

 イラン・イラク戦争で毒ガス攻撃を受けたイランの被害者4人が5日、竹原市忠海町の大久野島を訪れた。毒ガス資料館で島内にあった旧日本陸軍の毒ガス工場の実態を学び、製造に従事して後遺症に苦しめられた人々の慰霊碑も訪ねた。(山田祐)

 呉共済病院忠海分院で毒ガス工場の被害者を治療し、イランの被害者の支援にも努めた故行武正刀医師の長女則子さん(49)=三原市=たちが、資料館を案内した。イランの被害者は、毒ガス製造に使われた道具などを熱心に見学。生涯にわたり後遺症が続く毒ガスの悲惨さをあらためて確認していた。

 マスタードガスで全身の皮膚に傷を負った公務員ハッサン・フルザンさん(48)は「毒ガス製造に子どもも従事させられていたと知り、悲しい気持ちになった」と話していた。

 イランの被害者は、支援を続ける広島市東区のNPO法人「モーストの会」の招きで、2004年から年1回程度のペースで広島県を訪れている。ことしの一行は3日に広島入り。6日は広島市中区の平和記念公園である平和記念式典に参加し、同区の映画館で同日に始まる「広島イラン 愛と平和の映画祭」(12日まで)の開会式にも参加する。

 7日は同市南区で被爆者の体験を聞き、広島女学院大の学生たちと意見を交換。9日に帰国の途に就く。

イラン・イラク戦争での毒ガス被害
 イラン・イラク戦争(1980~88年)中、イラク軍が主に国境付近でマスタードガスなどを使ったとされる。兵士と市民の計1万3千人が亡くなったとの説もある。6万5千人はいまも、呼吸器や皮膚、目などに後遺症があり、苦しんでいるという。

(2016年8月6日朝刊掲載)

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