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騒音実態 測れぬ恐れ 岩国基地艦載機 11日試験飛行 1機だけ実施 疑問の声

 岩国市の米海兵隊岩国基地への米空母艦載機移転計画に伴い、市や県、周辺市町が要望してきた艦載機の試験飛行が11日に同基地で実施されることになった。ただ、飛行は1機のみ。市民からは実効性に疑問の声も上がる。貴重な機会を安心安全対策に生かせるのかが問われる。

 試験飛行は、県と岩国、柳井の2市、周防大島、和木の2町でつくる県基地関係県市町連絡協議会が2011年から毎年、中国四国防衛局に要望していた。

 単独でも実施を求めていた岩国市の福田良彦市長は「評価したい。市民にも飛行状況を体感してほしい」とのコメントを出した。県岩国基地対策室の矢敷健治室長は「周辺住民に大きな影響が出るのか測定結果を注視したい」。柳井市日積地区に騒音測定器を設置するよう防衛局に要望している同市の井原健太郎市長は「関心は艦載機移転が柳井市にどのような影響を及ぼすかにある」と述べた。

 現在、艦載機の大半を占めるのはFA18スーパーホーネットで、部隊のある米海軍厚木基地(神奈川県)周辺では騒音の主因とされる。岩国基地に所属する従来型ホーネットよりエンジン出力が大きく、地元自治体としては騒音を「体感」する必要性を訴えてきた。

 だが、今回の試験飛行の実施は、17年ごろまでとされる艦載機移転の正式な移転時期を市に伝える前に、市側の要望に応じたというポーズに映る。今回得られた騒音測定結果が、今後の受け入れ判断や安全対策に意味を持つかどうかは不透明だ。

 艦載機移転に反対する「愛宕山を守る市民連絡協議会」の岡村寛世話人代表(72)は「国が地方の要望に応えたことは一定に評価できる」とした上で、「1機だけの試験飛行で、どこまで実態を映すのか。艦載機移転に向けた既成事実づくりではないか」と疑問視する。試験飛行の結果を市が丁寧に分析し、市民に開示するよう注文している。

(2016年8月6日朝刊掲載)

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