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広島71年 世界に刻む 核なき世界へ連帯を

平和宣言 オバマ氏演説引用

 市民の頭上に米国が初めて原爆を落として71年となった6日、広島市は中区の平和記念公園で市原爆死没者慰霊式・平和祈念式(平和記念式典)を営んだ。被爆者たち約5万人が参列。犠牲者を悼み、平和への願いをかみしめた。松井一実市長は平和宣言で、5月に広島を訪れたオバマ米大統領の演説から「核兵器なき世界」を追求する情熱を表すという一文を引き、連帯して行動するよう世界へ訴えた。

 オバマ氏の訪問後初の原爆の日で、海外代表は被爆70年の昨年に次いで多い91カ国と欧州連合(EU)が参列。米国は、ケネディ駐日大使に代わり臨時代理大使が出席した。

 午前8時に開式。松井市長と2人の遺族代表が、この一年に亡くなるなどした広島の被爆者5511人分の原爆死没者名簿3冊を、原爆慰霊碑の石室に納めた。総数は昨年より2冊増え、111冊計30万3195人分に。原爆投下時刻の8時15分から1分間、参列者全員で黙とう。遺族代表の己斐東小教諭亀本宗祐さん(41)=西区=と、こども代表の観音小6年武田結衣さん(11)=同=が「平和の鐘」を響かせた。

 続いて、松井市長が平和宣言。オバマ氏の演説のうち「核を保有する国々は、核兵器のない世界を追求する勇気を持たなければならない」のくだりを、被爆者の思いを受け止めて廃絶を目指す証しだと指摘。「情熱を持って連帯し、行動を起こすべきではないか」と訴えた。

 各国のリーダーへは被爆地訪問を要請。オバマ氏の訪問に同行した安倍晋三首相には指導力の発揮を期待した。憲法の平和主義を体現するという「核兵器なき世界」の実現へは、核兵器禁止の法的枠組みづくりが「不可欠」と強調した。

 こども代表の竹屋小6年中奥垂穂さん(11)=中区=と亀山小6年青木優太君(12)=安佐北区=は「平和への誓い」で「命の尊さを、平和への願いを、私たちが語り伝えていく」とアピール。4年連続で出席した安倍首相はあいさつで、昨年触れなかった「非核三原則の堅持」に言及。「世界の指導者や若者に被爆の悲惨な実態に触れてもらい、核兵器のない世界に向け努力を積み重ねる」と述べた。

 オバマ氏は5月27日、現職の米大統領として初めて平和記念公園を訪問。原爆資料館を見学後、原爆慰霊碑に献花。碑前で演説し、被爆者と対話した。

 厚生労働省によると、3月末時点で被爆者は17万4080人。平均年齢は80・86歳になった。(岡田浩平)

平和宣言骨子

 ・人類が経験したことのない「絶対悪」が一瞬で広島の街を焼き尽くした。朝鮮半島や中国、東南アジアの人々、米軍の捕虜などを含め、罪のない人々を殺りくし、その年の暮れまでに14万人もの尊い命を奪った

 ・オバマ米大統領の「核兵器のない世界を追求する勇気を持たなければならない」という訴えは、被爆者の叫びを受け止め、核兵器廃絶に立ち向かう「情熱」を、米国をはじめ世界に示した

 ・核兵器廃絶へ、ヒロシマの思いを基に「情熱」を持って「連帯」し、行動を起こすべきではないか。外相会合で発表された、各国の為政者に被爆地訪問を呼び掛ける広島宣言は「連帯」に向けた一歩

 ・被爆者の平均年齢が80歳を超えた。未来に向けて被爆者の思いや言葉を伝え、広めるには若い世代の力も必要

 ・安倍晋三首相にはオバマ氏と共にリーダーシップ発揮を期待。日本国憲法が掲げる平和主義を体現する「核兵器なき世界」の実現を確実にするには、核兵器禁止の法的枠組みが不可欠

(2016年8月7日朝刊掲載)

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