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オバマ氏の折り鶴、受け止めた 資料館来訪時 渡された 中3花岡さん・小6矢野君

 2カ月前、原爆資料館(広島市中区)を訪れたオバマ氏から折り鶴を受け取った若者2人は、大統領から触発された何かを胸に「8月6日」を迎えた。被爆3世の吉島中3年花岡佐妃さん(14)と中島小6年矢野将惇(まさとし)君(12)=いずれも中区。それぞれの思いを行動に込めた。

 ♪命の重みを 肩に背負って 胸に抱いて-。花岡さんは午前8時すぎ、平和記念公園内の元安川親水護岸にいた。両親と妹を含む市民グループの約100人とともに「青い空は」などを合唱し、黙とうした。

 この日、学校では平和集会があったが、平和記念公園で過ごすことにしたのはオバマ氏の影響が大きい。歴史的な被爆地訪問の際、被爆して白血病で亡くなった佐々木禎子さんの折り鶴の前で眉を寄せて熱心に見入っていたオバマ氏の姿に「原爆を知ろう」とする真剣さを感じた。「自分ももっと考え、伝えていきたい」との思いに突き動かされ、合唱に加わった。

 被爆者だった祖父の河内満美さんは昨年、78歳で亡くなった。オバマ氏が演説で語った「いつか証言する被爆者たちの声は聞けなくなる」との一節が心に残る。「私が生まれた奇跡をかみしめ、自分なりに行動していこう」と誓った。

 矢野君はこの日、中区の中島小体育館であった全校集会で、児童を代表してスピーチした。祖母の被爆体験を盛り込み、「僕たちは、生き延びた人々の思いを受け継がなければいけません」と訴えた。

 原爆資料館でオバマ氏から折り鶴を渡された矢野君は「折り鶴を託された」と自覚する。「平和の役に立たなきゃ」と責任を感じるようになり、原爆被害に関する本を読み込んだ。全校集会は、この2カ月で芽生えた思いを仲間に伝える機会にもなった。

 集会の保護者席では、祖母の藤井美津江さん(77)=同=が見守った。広島県向原町(現安芸高田市)から入市被爆し、国内外に被爆の実態を伝える活動に取り組んできた被爆者である。

 矢野君は、校庭で出迎えた藤井さんに語り掛けた。「いつか、平和の大切さを世界に伝える懸け橋のようなことがしたい」。藤井さんは笑顔でうなずいた。

(2016年8月7日朝刊掲載)

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