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91ヵ国 向き合う「あの日」 被爆建物の見学も ヒロシマ8・6

 広島市中区の平和記念公園で6日にあった平和記念式典には、被爆70年で過去最多だった昨年の100カ国に次いで多い、91カ国と欧州連合(EU)の代表が出席した。市は式典後、各国代表を対象に被爆建物の見学を初めて企画。参加者は、被害の実態を伝える「無言の証人」と静かに向き合った。(金崎由美、小林可奈)

 昨年はローズ・ガテマラー国務次官とキャロライン・ケネディ駐日大使が参列し、今年5月にオバマ大統領が被爆地訪問を果たした米国。この日の式典にはロバート・ラプソン臨時代理大使が出席した。核兵器保有国ではほかに、英国、フランス、ロシアの代表が参列。核拡散防止条約(NPT)非加盟のインド、パキスタン、イスラエルも代表を派遣した。

 ヒロシマと母国を重ね、黙とうする姿も。激しい内戦を経験したアフリカ南部アンゴラのジョアン・バヘケニ大使は「市民が難局を乗り越え復興した広島は私自身の学びの場でもある」。30年前のチェルノブイリ原発事故の影響を受けたベラルーシのニコライ・シフツェフ参事官は「広島とわが国の核被害、そして原発事故から5年の福島の人たちを思った」と話した。

 被爆建物見学は13カ国、1機関の18人が参加。爆心地から約2・7キロの旧陸軍被服支廠(ししょう)(南区)の外観も見学した。被爆建物のガイドを続ける多賀俊介さん(66)=西区=から、収容された人が水を求めて息絶えた様子や鉄扉が爆風でゆがんだことなどを聞いた。ベルギーのギュンテル・スレーワーゲン大使は「原爆の破壊力がここまでとは。死者を忘れないという意味でも非常に貴重な建物と思う」と話していた。

(2016年8月8日朝刊掲載)

 その他の式典出席者も以下のように感想を明かした。

アナ・パウラ・コーベ1等書記官(ブラジル)
 われわれの目標は核拡散の防止にとどまることなく、核兵器を廃絶すること。全ての国が被害者になりうるからこそ、この脅威に終止符を打たなければならない。被爆体験を知ったり経験を共有したりすることは、われわれやさらに若い世代にとって重要だ。そんな折、平和記念式典とリオ五輪の開会式という二つの平和の式典が同時に開かれた。五輪開催国として、深く思いを致している。

アラン・ベロー駐日大使(アルゼンチン)
 皆が同じ場に集って思いを共有し、「二度と繰り返さない」という決意を新たにすることがいかに大切かを実感した。特に感動したのは子どもによる平和への誓い。被爆者の体験を次世代に伝えることが大切だからだ。 この地をオバマ米大統領が5月に訪れた。皆が待ち望んでいたことだし、核のボタンを握る立場にある人間が、核を巡る緊張をエスカレートさせず、核兵器には反対するという意志をここで述べたことは素晴らしい。

アネッサ・クンドロビッチ駐日大使(ボスニア・ヘルツェゴビナ)
 昨年に続き2回目の式典出席だ。広島と長崎を訪れることは私にとって単なる職務ではなく、外交官・市民として死者を悼むという倫理上の責務だ。20世紀で最悪の惨劇がヒロシマとナガサキであり、誰もがここを訪れるべきだ。自分は両方の被爆地で被爆体験を聞いたが、非常に胸を揺さぶられるものだった。とはいえ、体験はともすれば忘れられ、戦争の過ちは繰り返される。だからこそ核兵器は廃絶されなければならない。

アレハンドロ・ポサダ駐日臨時大使(コロンビア)
 若い頃、広島に関する本を何冊も読んでいたのだが、今回は被爆者と会って体験を直接聞くことができた。被害者の声を聞きながら、核兵器廃絶への意志と感情をより強めることができた。

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