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被曝線量 短時間で解析 原医研 田代教授グループ

 広島大原爆放射線医科学研究所(広島市南区、原医研)の田代聡教授(50)たちのグループは21日、放射線の被曝(ひばく)線量を推定する新たな方法を開発した、と発表した。従来より短時間で解析でき、原発事故など大勢が被曝する事故での迅速な治療に役立つという。

 被曝線量は血液中の細胞を顕微鏡で観察し、染色体23対のうち変形した数で推定する。変形した数が多いほど、被曝線量が高い傾向がある。

 放射線で傷ついた染色体の形を見分ける方法と、蛍光色素で着色し変形部分を色で特定する方法があった。だが、形での見極めは高度な技術を求められる。着色には2日以上かかるなど、それぞれ課題があった。

 新たな方法は、傷ついた染色体が元に戻ろうとして、末端部が入れ替わったり、結合部が複数できたりすることを利用。試薬で結合部を赤、末端部を緑に染めて変形を確かめる。着色にかかる時間は1時間程度で済む。

 田代教授は「原発事故のような放射線災害時でも速やかに被曝線量を調べられる」とメリットを強調。低線量被曝への応用の研究も進める。成果は近く、米科学誌「ラディエーションリサーチ」に掲載される。(山本堅太郎)

(2012年5月22日朝刊掲載)

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