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胎内被爆「戦争ない世界を」 小頭症の吉本さん涙で訴え ヒロシマ8・6

 原爆小頭症患者の吉本トミエさん(70)=広島市安佐南区=が6日、中区であった集いに参加した。71年前、母親のおなかの中で高線量の放射線を浴びて生まれ、「最も若い被爆者」と呼ばれる患者も古希を迎えた。「原爆も戦争もない世界をつくって」。吉本さんは、若い世代の参加者に涙ながらに訴えた。

 爆心地から約1・2キロの田中町(現中区)にいた母親の胎内で被爆し、約6カ月半後に生まれた吉本さん。20歳の時に原爆小頭症と知った時に頭をよぎった偏見への恐怖、「苦労をかけるね。すまない」と言って亡くなった母…。被爆の影響とともに歩んだ70年を振り返った。

 妊娠初期の母親の胎内で強い放射線を浴び、知的、身体障害を伴って生まれた原爆小頭症患者。吉本さんは、原爆投下直後の惨状を直接は知らない。この日、黒い雨や崩れた家屋など、母から一度だけ聞かされた話を基に描いた絵を見せながら語った。

 集いは原爆被害者相談員の会の主催。吉本さんたち12人の被爆者の証言を、中学生や大学生たち約250人が聞いた。平和記念式典へ派遣する新潟市の事業の一環で参加した同市の中学3年堀川夏実さん(15)は「生まれながらに原爆の影響を受けていたと思うと心が苦しい。平和へ向けできることからやっていきたい」と話した。(菊本孟)

(2016年8月7日朝刊掲載)

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