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本願寺派大谷門主 「伝灯奉告」控え広島訪問 門信徒と交流「消息」語る

心豊かに生きられる社会を

 浄土真宗本願寺派(本山・西本願寺、京都市下京区)のトップ、大谷光淳門主(39)が7月29日、広島市中区の本願寺広島別院を訪れた。門主の代替わりを仏前に報告する「伝灯奉告法要」(10月~来年5月)に向け、機運を盛り上げる全国巡回の締めくくり。門信徒たちと折り鶴作りなどで交流しながら、法要に当たっての言葉(消息)で「自他ともに心豊かに生きられる社会の実現」を訴えた。(桜井邦彦)

 巡回の記念式典は本堂であり、熱心な安芸門徒たち約850人が参加。広島別院の安部恵証輪番(64)が讃仏偈を勤め、集まった人たちも声をそろえた。

 大谷門主は消息の中で「科学技術の発達による便利で豊かな生活の追求や、欲望の肥大化はとどまることを知らないが、人々は豊かさのみを追求するむなしさに気づき始めたのではないか」と述べた。人間関係の希薄化に伴って悩みや不安を抱える人が増えていることも指摘し、「阿弥陀如来のお慈悲を聞信させていただき、そのありがたさ、尊さを一人でも多くの方に伝えることが大切」と語り掛けた。

子どもと折り鶴

 消息に関連した記念布教では、本願寺派の森田浄円勧学(61)が「親指が仏様で、小指が私だとすると、間の3本の指は煩悩のむさぼりと怒り、愚痴。手を見ると仏様の親指はいつも、三毒のある私たちのほうを向いていてくださっている。これに気付かせていただくのがご法義」と説いた。

 続いて、大谷門主は地元が企画した交流行事に参加し、子どもたちと並んで折り鶴1羽を折り上げた。中区でお好み焼き店を営む門徒の佐伯尋子さん(43)から手ほどきを受け、広島風のお好み焼き作りにも挑戦した。

 式典前には、若手の僧侶や門徒たち計7人と、大谷門主との懇談も非公開であった。大谷門主は、寺に来てもらう方策を世代ごとに検討する必要性を示したという。

 懇談の席で「若者の宗教離れが進み、同世代を寺へ集めるのに試行錯誤している」と伝えた安芸教区仏教青年連盟の立花資識委員長(41)=呉市=は終了後、「ご門主が同年代の門徒とも対話する場を設けて」と望んだ。広島青年僧侶春秋会会長で住蓮寺(呉市)の豊原正史住職(38)は「お寺がみんなの居場所であることを、いろんなメディアを通して広く発信してほしい」と期待していた。

全国60ヵ所回る

 大谷門主は一昨年の6月、「法統継承式」を経て25代門主に就任。昨年10月からことし7月にかけて、全国各地の別院など60カ所を回った。

 広島県内では、福山市の本願寺備後教堂も5月25日に訪れた。若手僧侶は記念行事の中で、福山大空襲を題材に創作した朗読劇を披露。戦争体験者の祖父と孫の掛け合いを通じ、「本当に尊いのは命。『尊い犠牲』を出してはいけない」と問い掛けた。劇を企画した明浄寺(府中市)の立神義昭住職(57)は「ご門主を交えて、平和の問題について考え、共有する機会になった」と話す。

 広島別院で全国巡回を終えた大谷門主は「幅広い世代に集まっていただき、うれしかった。こうして子どもから大人までがみ教えを聞き、楽しい時間を過ごせる場になれば、お寺が大切な場所になっていけるのではないか」と、寺院活性化に意欲を示していた。

伝灯奉告法要
 浄土真宗の宗祖親鸞が明らかにした教えを、新しい門主が伝承し受け継いだことを仏前に告げるとともに、念仏の教えが広く伝わることを願う。ことし10月1日から来年5月31日にかけて10期80日間営まれ、仏前結婚式など関連の行事もある。大谷光真前門主の伝灯奉告法要(1980年)は62日間で28万人が参った。

(2016年8月8日朝刊掲載)

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