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運動の在り方問う意見も 大会総括 被爆者訴え 継承が課題 原水協・禁

 被爆71年の夏に開かれた二つの原水爆禁止世界大会は、オバマ米大統領の5月の広島訪問や、核兵器禁止条約を目指す議論など、核兵器廃絶を巡る動向を強く意識した内容となった。一方、被爆者の高齢化が進む中で、今後の運動の在り方を問う意見も出た。

 二つの大会はいずれも、多くの発言者がオバマ氏の広島訪問に触れた。原爆投下国の現職大統領による初の被爆地訪問を評価しつつ、具体的な政策への言及の少なさを批判する意見が多かった。それだけに両大会では、運動を通じて廃絶への具体的な進展を促そうと訴える声が目立った。

 日本原水協などの大会では、禁止条約の実現を目指す署名で、国際世論を盛り上げていく方針を確認。広島で開いた国際会議では、条約の交渉開始を国連総会に勧告するよう、国連の核軍縮作業部会に強く求める宣言文をまとめた。宣言文は同部会に送付した。

 原水禁国民会議などの大会では、米国が検討中とされる核兵器の先制不使用の宣言について、「核の傘」に頼る安全保障を理由に日本政府が反対しないよう求める書簡を安倍晋三首相に送った。

 大会の議論を具体的な行動につなげようとする試みの一方、運動の課題を指摘する声も少なくなかった。

 来賓として出席した長崎市の田上富久市長は「広島と長崎の訴えが過去の特別な出来事と受け止められている面がある」と懸念。ある参加者は「生活そのものに不安を抱える若い世代に核兵器廃絶、戦争のない世界の実現という訴えが響くだろうか」と不安視した。

 二つの大会では「核兵器廃絶の世論を高め保有国を孤立させよう」との呼び掛けが何度も聞かれた。地域や世代、思想信条を超えた共感の鍵を握るのは、同じ人間としての被爆者の苦しみに他ならない。いかに受け継ぎ、共有するのかが問われている。(明知隼二)

(2016年8月10日朝刊掲載)

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