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爆心地から9~22キロ6ヵ所 「黒い雨」痕跡 初確認

 広島への原爆投下後に降った「黒い雨」の痕跡を調べている広島大などのグループは、爆心地から約9~22キロ離れた広島市佐伯区湯来町や安芸太田町の民家など計6カ所の床下の土から「黒い雨」に由来するとみられる放射性物質セシウム137が見つかった、との調査結果をまとめた。痕跡確認は初めてで、6カ所とも国が援護対象としている「大雨地域」の外だった。(宮崎智三)

 金沢大の山本政儀教授(放射化学)らの研究グループは、1946~48年に建てられた家など20軒の床下を調べ、地中30センチ掘って土を採取し、セシウム137を測定した。

 広島原爆のウラン核分裂で生じたセシウム137は「黒い雨」にも含まれ、今なお残っているとされる。ただ、米国や当時のソ連が1960年代前半までに繰り返した大気圏内核実験でも、プルトニウムなどと一緒に世界中にばらまかれた。

 このため、広島原爆ではほとんど放出されなかったプルトニウムが一定レベル以上検出された14カ所は、核実験の影響が強く、広島原爆に由来するセシウム137かどうか見極められないと判断。残り6カ所で検出されたセシウム137についてだけを、「黒い雨」に由来する可能性が高いと結論づけた。

 6カ所は、爆心地から北約9キロの安佐南区安東、約16キロの安佐北区安佐町、約22キロの安芸太田町の計3カ所は小雨地域内。北西20キロ前後の佐伯区湯来町の計3カ所は、小雨地域にも入っていない。

 セシウム137が原爆投下時に出していた放射線量を逆算すると、1平方メートル当たり40~100ベクレル。研究グループによると、爆心地から約3キロ以遠で浴びた直爆の放射線に相当するという。

(2012年5月24日朝刊掲載)

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