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被爆前の遺構 今秋公開 広島市方針 資料館敷地を発掘調査

 原爆資料館(広島市中区)の本館敷地での発掘調査で市は、出土した被爆前の町並みの遺構を今秋に市民に初公開する方針を固めた。参加者を募って説明会を開き、原爆で壊滅した繁華街、旧中島地区(現平和記念公園)の在りし日の営みと被害の実態を伝える。

 今回の発掘調査は、本館の免震工事を前に記録を残すため、計約2200平方メートルを対象に昨年11月に開始。東側から掘り進め、道の縁石や溝のほか、溶けて変形した牛乳瓶などの生活用品が見つかった。オバマ米大統領の訪問に備えて中断し、5月中旬に埋め戻したが、平和記念式典を終えたため、近く舗装を剝がし来月に調査を再開する。

 公開するのは、再開後に掘る敷地中央から西側にかけての部分。市内有数の大規模な寺院だった誓願寺の一部や同寺に創設されて地区内外の幼児が通った無得(むとく)幼稚園、周辺の家屋などの跡が出土するとみられる。現地で開く説明会は9~10月ごろを想定。詳しい日程や回数を今後、詰める。

 ただ、今回出た遺構の大部分は、免震工事をするためには取り壊さざるを得ず、市は資料価値が高いと判断した出土品を回収し、遺構の一部は切り取って保存する方針。本館敷地外の別の場所の発掘や、見つかった遺構の活用に関し、市平和推進課は「被爆前の市民生活を追体験できる空間を将来整備できるかどうか検討したい」としている。(水川恭輔)

(2016年8月10日朝刊掲載)

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