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被爆2世 手帳式で健診録 山口県が切り替え、項目も追加 

二世の会「体験継承へ活用を」

 山口県は本年度、被爆2世の健康診断の記録表を手帳式に替えた。従来は折り畳める1枚紙だったが、より使いやすくした。本年度から健診に加わった血液がんの一種の検査結果も記載できる。被爆二世の会(山口市)は「記録表を持っていない人も多いはず。被爆体験の継承のためにも活用を」と呼び掛けている。(宮野史康)

 県が2世の要望を受けて2000年度に作った四つ折りの記録表は縦15センチ、横42・4センチ。10回分の健診結果を項目ごとに記載できる。健診の際、医療機関で書き込んでもらう。昨年度までに1897人に交付した。

 厚生労働省は本年度、被爆2世健診に多発性骨髄腫の検査を追加。従来の記録表には同検査の項目がないため、県は、刷新に合わせて手帳式(縦15センチ、横10・6センチ)を導入した。1ページが健診1回分で、12ページある。県内各地域の健康福祉センターなどで交付申請できる。

 一方、県内の被爆者健康手帳の保持者は3月末時点で3036人。二世の会の寺中正樹代表(54)によると、被爆体験を子どもに伝えていなかったり、差別や偏見への懸念から2世が健診を避けたりして、記録表の交付から相当数が外れているとみられる。

 二世の会は長年、被爆者と同様の医療補償を求めてきた。1989年には「被爆2世健康手帳」を自主的に作り、10年間で希望者約250人に配布。県による記録表の発行へつながった。

 被爆者の高齢化を受け、2世には被爆体験の継承や平和活動で果たす役割にも期待が寄せられている。寺中代表は「行政に申請して手帳を受け取ることは、2世としての社会的な自覚や権利を示すことにつながる」と指摘。「新しい検査項目も加わり、健康管理の上でもメリットがある」として記録表の活用をPRしていく。

(2016年8月10日朝刊掲載)

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