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騒音の影響 不透明 岩国で米艦載機試験飛行 自治体関係者 国に対応求める声

 岩国市などが国に要望していた米空母艦載機の試験飛行が11日、同部隊の移転計画がある同市の米海兵隊岩国基地で実現した。だが、たった1機によるわずか10分間の飛行では、艦載機移転後の騒音の実態や市民生活への影響は不明確だ。基地近くで視察した自治体関係者や市議からは、実効性を疑問視する声や国の騒音対策強化を求める意見が上がった。

 視察場所の「みすみクリーンセンター」では、市と中国四国防衛局が試験飛行時の騒音を測定した。市側は騒音測定値を比較する対象として、従来型ホーネットの飛行も希望していたが、実際に飛んだのはスーパーホーネットと同型のEA18Gグラウラー1機のみ。同条件下での比較はかなわなかった。

 国と米軍の調整は容易でなかったと思われるが、艦載機の移転時期を市に伝える立場の国が、「市の要望に応えた」という形ばかりの印象が拭えない。在日米海軍司令部(神奈川県横須賀市)は「試験飛行は市から要請を受けたものであり、海軍としてのコメントは差し控えたい」とする。

 広島県からは国際課の職員2人が視察に。山本耕史課長は「今回の試験飛行だけで実際の騒音がどうなるのかは評価しがたい。艦載機移転に伴う騒音被害は県も懸念しており、国はしっかり対策を講じてほしい」と求めた。大竹市は阿多田島に1人、視察場所に2人の職員を派遣したが、同島周辺での旋回はなかった。

 「艦載機の通常の訓練は時間もルートもさまざまであり、1機だけの試験飛行は意味がない」。基地監視団体「リムピース」の共同代表も務める田村順玄岩国市議は試験飛行終了後、こう切り捨てた。ほかの同市議からは「天候条件や時間を変えて複数回やるべきだ」との提案もあった。

 在日米軍再編計画では、2017年ごろまでに米海軍厚木基地(神奈川県)から艦載機59機が岩国基地に移転予定。あらためて国が市に移転時期を伝えるとみられる。中国四国防衛局の菅原隆拓局長は試験飛行終了後、「具体的な移転時期は日米間で協議している」と述べた。

 福田良彦市長はこの日、受け入れについて「国に要望している安心安全対策や地域振興策の進み具合などから総合的に判断する」と従来の姿勢を強調。「試験飛行の状況を判断材料にする考えはない」と話した。

FA18スーパーホーネット/EA18Gグラウラー
 スーパーホーネットは対地、対空攻撃に優れた米海軍の主力戦闘攻撃機。従来型のFA18ホーネットに比べ機体が一回り大きく、エンジン出力も大きい。米海軍厚木基地に所属する空母艦載機の大半を占める。グラウラーは2人乗りスーパーホーネットの改良型。ともに全長18・5メートル。全幅13・7メートル。

(2016年8月12日朝刊掲載)

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