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史料が伝える戦時下の生活 行政文書70通 岩国で発見

兵士見送り・遺骨出迎え 村役場が集落に命令

 岩国市錦町の民家に、日中戦争(1937~45年)時に旧広瀬村(現同町広瀬)役場が各集落の区長に宛てた行政文書が70通以上保管してあることが10日、分かった。文書は戦病死した軍人の遺族への弔問を求めるものや、応召兵の見送り日時を通知するものまで多岐にわたっており、専門家は「地域史を知る上で重要な史料」としている。

 文書は、同村尾川区長を務めていた藤原実則さん(70年に63歳で死去)に宛てたもので、長男の正士さん(73)が実則さんの死後に発見した。実則さんが区長を務めていた38~40年の文書が中心だという。

 昭和13年(38年)9月8日付の「應召者出発見送方ノ件」では、同村から戦地に赴く9人の見送り行事を各戸に通知するよう要求。各人の戦地に赴く日時などを記しているほか、「本書ハ用済ノ上ハ必ズ焼却セラルルコト」とある。

 同年1月6日付の「村葬執行ノ件」では、同村出身と思われる3人の戦病死者について、村での合同葬儀を求めている。戦死者の遺骨を住民多数で出迎えるよう指示したものもある。

 また、通知に従い戦勝記念のちょうちん行列を実施したことなどがうかがえる日誌もあった。

 市錦総合支所によると、これらの文書は市には残っていないという。

 正士さんは「役場から次々と命令が出ていた父の世代の苦労がしのばれる。後世に伝え、平和を考えるための役に立てば」と話している。(加田智之)

重要な地域史料

 広島大文書館の小池聖一館長(日本近現代史)の話 戦時中、村役場から各区に出された命令文であり、旧広瀬村という地域の歴史を知る上で重要な史料になる。命令に従い実際に行事をしたことを示すと思われる日誌も興味深い。これだけの量がまとまって出てくるのも珍しいのではないか。

(2016年8月13日朝刊掲載)

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