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社説・コラム

『ひと・とき』 作家・山口泉さん 8月の朗読会 続ける

 広島市中区の平和記念公園にある「原爆の子の像」のそばで、毎年「原爆の日」に合わせ、絵本の朗読会を仲間と催している。今年で23回目。8月の広島を行き交う人々と言葉に長年向き合い、「社会の変化を定点観測するようでもある」。

 絵本は、自らも協力し、東京の大学生らが作り上げた「さだ子と千羽づる」。1人の少女の死が世界に何を問い掛けているのか、日本の戦争責任も含めて考えさせる。朗読にチェロの伴奏で寄り添う。

 3年前、東京から沖縄に移住した。基地問題に肌で接し、日本の政治、社会の現状に対する憂いは深い。「戦争観などを巡り、かつてなら罷免に直結したような政治家の失言が、失言と認識されない」。8月の広島でさえも、平和主義の「空洞化」を感じるという。

 だからこそ、炎天下の朗読会は「来年も再来年も、生きている限り」続けるつもりだ。(道面雅量)

(2016年8月13日朝刊掲載)

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