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対岸の住民に懸念 山口・広島 30キロ圏 避難不安 伊方3号機再稼働

 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)が12日に再稼働し、瀬戸内海の対岸にある山口、広島両県の住民たちから懸念の声が相次いだ。原発から30キロ圏内に一部が含まれる山口県上関町の離島、八島は高齢化が進み、住民は事故時の避難に不安を抱える。広島県でも伊方原発の運転差し止め訴訟が起きるなど事故の影響を心配する動きが広がっている。(井上龍太郎、河野揚)

■山口県八島

 「反対する気持ちや不安はある。でも電力会社も地域も違う。どうしようもないよね」。山口県最南端の離島、八島。伊方3号機が再稼働したこの日、漁業岡田雄一さん(64)は島内の船着き場でこぼした。

 2013年には、放射性物質の放出を伴う原子力災害が起きた場合、定期船や漁船などで本土側に向かう町の避難計画もできた。ただ八島の住民に、再稼働したという連絡はいずれの機関からもなかった。海を隔てた佐田岬半島の原発に不安と諦めが交錯する。

 住民数はこの50年間で20分の1以下に減少。22世帯29人の半数は80歳以上だ。県と町は13年から防災訓練を毎年開いているが、過去2年は島民の年齢を考慮し、自宅退避にとどめた。船で脱出する訓練は実現していない。島は避難計画の実効性を見通せないまま、再稼働を迎えた。

 八島区長の大田勝さん(78)は「万一の際、われわれだけではどうにもできない。避難を強いるような事故のないよう、安全確認を徹底してほしい」とくぎを刺す。

■広島県

 「ポンプのトラブルなど不手際が続く中での再稼働は理解できない」。広島市佐伯区の被爆者、堀江壮さん(75)は憤った。堀江さんを団長とする原告団は3月、伊方3号機の運転差し止めを求める提訴と仮処分の申し立てを広島地裁に起こした。

 広島市は原発から北に約100キロ離れている。それでも「福島の事故を考えれば、広島も危ない」と堀江さん。風向き次第では広島にも、局地的に放射線量が高いホットスポットが現れる可能性があると訴える。

 瀬戸内海の放射能汚染への懸念も強い。広島弁護士会は1月、再稼働に反対する会長声明を出した。海が汚染されれば「住民の生命、身体を脅かす」とする。尾道市議会は6月、再稼働の中止を求める請願を採択した。提出者の無職国西好一さん(70)=尾道市=は「海の汚染は尾道にも広がる。今からでも稼働を止めてほしい」と強調した。

(2016年8月13日朝刊掲載)

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