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八島(山口県上関)の住民 屋内退避 伊方原発再稼働 重大事故起きたら 放射線基準値超えなら島外へ 

30キロ圏外は避難計画なし

 12日に再稼働した四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)。半径30キロ圏内にある上関町の離島、八島の住民や、その他の地域の県民は、同原発で重大な事故があれば避難を迫られる。山口県や上関町の地域防災計画などから緊急事態の対応を探る。(佐藤正明)

 原子力規制委員会が示す緊急防護措置区域(UPZ)の半径30キロ圏は、県内では29人が暮らす八島だけが含まれる。原子炉の冷却ができないような重大事故が起きると、首相が全面緊急事態を宣言し、国が災害対策本部を設置する。

 これを受け、県と上関町は地域防災計画に基づき災害対策本部を設置。県は、職員2人を愛媛県西予市にある対策拠点のオフサイトセンターに派遣する。

無線や車で伝達

 一時避難などを指示するのは国の原子力災害対策本部で、県や上関町などにテレビ会議システムなどを使って伝える。

 同町は、2013年7月に策定した避難行動計画に沿って対応する。八島で防災行政無線や広報車を使って島民に伝達し、自宅や島内の八島ふれあいセンターに屋内退避してもらう。

 退避後、伊方原発から放射性物質が放出された場合は、県が島内に設置している放射線監視装置(モニタリングポスト)などの数値で国が島外避難を判断する。基準は、毎時500マイクロシーベルトを超えると数時間以内に避難、毎時20マイクロシーベルト超では1週間以内に避難となる。

 島外避難には1日3往復の定期船(定員58人)を使う。悪天候などの場合は、海上保安庁の船や自衛隊のヘリコプター、船を使って本土へ。町総合文化センターに退避する。

大学病院で治療

 町総合文化センターでは、町が避難者の対応をする。県は被曝(ひばく)線量などを調べる検査を担い、簡易除染で拭き取りなどを行う。必要に応じて山口大医学部付属病院に搬送し、さらに被曝量が多い場合は広島大病院で治療を受けてもらう。

 一方で、八島を除く30キロ圏外については、現時点では県も上関町も伊方原発の事故を想定した避難計画は策定していない。県の坂本竜生危機管理監は「そもそも国がUPZの圏内までしか原子力災害対策指針に示していない。まずはUPZ圏内からしっかりとやるということだと思う」としている。

トラブル 迅速通報 山口県、愛媛県・四国電と文書

 山口県は、伊方原発が立地する愛媛県、四国電力とそれぞれ文書を交わし、同原発のトラブルに関する情報が入るようにしている。

 山口、愛媛両県は2012年3月、同原発で異常や不具合があった場合、愛媛県が情報提供する確認書を交わした。愛媛県が四国電から伊方原発の異常の通報や連絡を受けた場合、速やかに山口県に連絡する内容だ。

 同県防災危機管理課によると、伊方原発3号機の1次冷却水のポンプに不具合が生じた7月17日も、同日中にメール、ファクスで連絡があった。

 県は13年3月、四国電とも、同原発で異常などがあった場合、迅速に通報を受ける文書を取り交わしている。12日午前9時すぎには、再稼働の連絡が電子メールで届いた。上関町は山口県から情報提供を受ける。

 愛媛県から県外の避難者について、同県が13年6月に策定した広域避難計画では同県東部と大分県を避難先として指定している。同計画策定時に山口県は、避難先の候補として県内841カ所(46万7635人)を愛媛県側に示したという。(佐藤正明)

(2016年8月13日朝刊掲載)

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