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学徒動員 実態に迫る 郷土史研究家 秋本さん冊子

データや体験談収録 旧光海軍工廠

 光市虹ケ丘の郷土史研究家秋本元之さん(80)が、旧光海軍工廠で兵器製造などに従事させられた県内の生徒の出身校別人数や配属部署、体験談を冊子「光海軍工廠への学徒動員」にまとめた。独自調査で巨大兵器工場への学徒動員の実態を明らかにした。

 旧海軍が建設した光工廠では、特攻兵器「回天」や大砲などが造られた。終戦前日の1945年8月14日、米軍機の空襲で破壊され、市の記録では748人が犠牲になった。

 秋本さんは昨年、計画立案から40年3月の開庁までの経緯を冊子「光海軍工廠秘史~建設第一期・開庁以前~」にまとめた。続編となる今回は学徒動員に焦点を絞って調査し、74ページに編集した。

 県内の各市町史や小学校の沿革史などを基に、旧国民学校や旧制中学校別の動員数や期間、配属部署、死傷者数を分析。38校から少なくとも延べ約7750人が動員され、空襲が原因で亡くなった生徒数は142人で、市調査の136人を上回る可能性が高いことを突き止めた。

 旧国鉄や民間工場に派遣された生徒数も集計。元生徒27人から4年間かけて聞き取った体験談を、約30ページを割いて収録した。

 秋本さんは浅江小の元校長。戦病死した父が勤めていたインドネシア・ボルネオ島の旧海軍燃料廠を調べていた2010年、防衛省防衛研究所(東京)で旧光工廠に関する資料を見つけ研究を始めた。

 「戦後71年を経て、光工廠を知る元生徒が減っている。どれだけの若者が動員され、何を思ったのかを記しておきたかった」と秋本さん。150冊を印刷し、調査に協力した市町や学校へ寄贈する。閲覧は光市立図書館などでできる。(高田果歩)

(2016年8月15日朝刊掲載)

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