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世界の平和「つなぐ」 全国戦没者追悼式 中国地方 375人参列

 終戦の日の15日、東京都千代田区の日本武道館であった全国戦没者追悼式に、中国地方から遺族375人が参列した。犠牲となった肉親の冥福を祈り、テロや内戦が各地で続く世界の平和実現を強く願っていた。

 広島県代表の新谷和弘さん(75)=大竹市=は、40歳だった父良三さんをビルマ(現ミャンマー)で亡くした。「親になり、妻子を残して逝った父の無念さを思うようになった」。戦後、保険の外交員や内職をしながら育ててくれた亡き母の苦労も胸に刻む。「今ある平和は、多くの犠牲の上にあることを忘れずにいたい」と花を手向けた。

 山口県代表の川尻雅男さん(77)=山口市=の父栄さんは、陸軍将校として沖縄で命を落とした。34歳だった。洞窟内で自決した可能性が高いという。「幸せに暮らしています」。戦後71年のことし、父と全ての戦没者に心の中で報告した。

 島根県代表の春木芳子さん(82)=出雲市=は、35歳だった父三原佐蔵さんを、台湾とフィリピンの間の海峡で亡くした。輸送船が潜水艦に撃沈された。「世界ではテロなど殺りくが絶えないが、戦争は二度としてはいけない」と訴えた。

 「22歳で亡くなり、無念だっただろう」。岡山県代表の植田千代子さん(89)=岡山市北区=は、ビルマで戦死した兄の戸川勉さんの記憶をたどった。けんかもせず、優しく接してくれた。命を落とした経緯は、今も分かっていない。

 鳥取県代表の山脇基一さん(78)=米子市=は、南太平洋のニューブリテン島で父弥市さんを亡くした。「父だけでなく、尊い命を失った多くの方の冥福を祈りたい」

 原爆死没者遺族代表の小川九人雄さん(76)=広島市西区=は、父与一さんと母エイさんを失った。5月にオバマ米大統領が初めて広島を訪問したことを踏まえ、「これからも核保有国の指導者は被爆地を訪ね、原爆がもたらす惨状を知ってほしい」と望んだ。

 全国の遺族を代表して小西照枝さん(74)=東広島市=は、追悼の辞を述べた。戦死した父の瀬川寿さんをしのび、「世界の平和、命の大切さを後世につなぐべく、たゆまぬ努力をします」と誓った。(山本和明、田中美千子、清水大慈)

(2016年8月16日朝刊掲載)

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