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廃絶に逆行 怒るヒロシマ

首相、先制不使用に反対

 オバマ米政権が検討している核兵器の先制不使用政策を巡り、安倍晋三首相が反対の意向を米側に伝えたと米紙で報じられたのを受け、広島の被爆者たちは16日、怒りの声を上げた。

 「核戦争の口火を切ることになる先制使用の可能性を残すよう求めるのは、普通に考えておかしい」。広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(74)は憤る。原爆の日に合わせて米国の平和団体に招かれ、3~13日の日程で首都ワシントンを訪問し、集会などで市民と核兵器廃絶への思いを共有したばかり。「安倍首相も『核兵器なき世界』を目指すと言ってきたではないか。言動が矛盾している」

 米国の核政策見直しは、5月に広島訪問を果たしたオバマ氏の、さらなる軍縮への一手として注目を集めている。この日、有識者組織の「核不拡散・核軍縮アジア太平洋リーダーシップ・ネットワーク」(APLN)が発表した、米国の先制不使用政策の採用を支持し、同盟国へも後押しを呼び掛ける元閣僚ら40人の声明に、広島県の湯崎英彦知事も署名。県によると、知事はAPLNに参加しており、今月10日、賛同を求めるメールが届き、応じたという。

 ただ、米国の「核の傘」に安全保障を頼る日本政府が先制不使用に反対するのではないかと、被爆者たちは当初から懸念していた。もう一つの県被団協(佐久間邦彦理事長)の大越和郎事務局長(76)は「保有国以上に核兵器に依存している日本政府のひどい実態が明らかになった。広島を訪れたオバマ氏が半歩でも廃絶へ進めようというのに賛同できないのは、国民の意識とかけ離れている」と批判した。(岡田浩平、明知隼二)

(2016年8月17日朝刊掲載)

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