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連載・特集

日本遺産を巡る <1> 海上自衛隊呉地方総監部第一庁舎 呉市幸町

現役109年 重厚さ保つ

 呉港を見下ろす小高い丘に威容を示す。かつての鎮守府庁舎のうちで唯一、現役を通す生きた遺産だ。

 呉鎮守府は1889年に開いた。初代庁舎は16年後の明治芸予地震で半壊。現建物は2代目で1907年に新築された。地下1階、地上2階建て(延べ約1990平方メートル)。赤れんがと白い御影石は、109年たっても輝きを保つ。

 玄関は近年、東の山手側がもっぱら使われる。が、反対側の海に向かって開く玄関も、負けず劣らずの重厚な造りになっている。

 市文化財保護委員会の松下宏さん(81)は「士官が海側から出入りすることもあるため、2カ所とも正面玄関のように仕上げた。鎮守府ならではの特徴だ」と説明する。

 海上自衛隊呉基地を母港とする艦艇は国内最多の39隻。この補給や活動を支えるのが呉地方隊で、その指揮を呉地方総監部が担う。第一庁舎は地方総監が執務をする中枢だ。庁舎は事前申請すれば毎週日曜日に見学ができる。(小笠原芳)

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 明治期に旧海軍鎮守府が置かれた呉市はことし4月、神奈川県横須賀、長崎県佐世保、京都府舞鶴の旧軍港3市と合わせ、「日本近代化の躍動を体感できるまち」として日本遺産に認定された。認定の決め手となった「ストーリー」を紡ぎ出す呉市内17カ所の史跡のうち、5カ所を案内する。

(2016年8月17日朝刊掲載)

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