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島根原発の地元 「判断の経過 説明を」

 野田佳彦首相が関西電力大飯原発3、4号機の再稼働を近く決断する見通しが高まった31日、中国電力島根原発(松江市鹿島町)の地元では再稼働の判断は地域の個別事情によるとの声が上がった。市民からは「拙速」との批判も。被爆地広島でも安全性への懸念と容認の意見が交錯した。

 「大飯と島根は別。再稼働への同意は地域ごとの話になる」。松江市防災安全部の小川真部長は、再稼働に欠かせないストレステスト(耐性評価)を中電が提出していない状況も踏まえ、両原発の状況の違いを指摘した。

 島根県の溝口善兵衛知事は「判断の経過、根拠を国民に分かりやすく説明することが重要」と注文。県の一部が島根原発30キロ圏に入る鳥取県の平井伸治知事も「原子力安全規制組織の発足が遅れ、安全基準も暫定的という状態で議論し混乱を招いた。政府は十分な議論ができる環境づくりを」と求めた。

 一方、島根原発増設反対運動の芦原康江代表は「安全対策さえ万全でない中で稼働は容認できない」とした。

 広島県被団協の坪井直理事長は脱原発を訴える一方、「電力不足が市民の暮らしをどう脅かすのか見えず、強く訴え切れないとの思いがある」と複雑な心境を明かす。もう一つの県被団協(金子一士理事長)の吉岡幸雄副理事長は「安全神話が崩れた今、代替エネルギー開発に全力を注ぐべきだ」と反対する。

 広島市民の意見は割れた。東区の観光ボランティアガイド佛崎勝弘さん(67)は「他の原発が一気に稼働に向かわないか」と懸念。安佐南区の広島経済大4年多賀文史朗さん(21)は「安全性が担保された地域から再稼働するのは仕方ない」と理解を示した。

 中国電力の小畑博文副社長は「需給の安定が重要。安全性を確認した上で再稼働することが必要」と話した。

(2012年6月1日朝刊掲載)

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