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社説・コラム

『書評』 郷土の本 綾瀬はるか『戦争』を聞くⅡ 10代に届ける被爆者の証言

 「綾瀬はるか『戦争』を聞くⅡ」が刊行された。広島市出身の俳優綾瀬はるかさんが、広島と長崎で被爆者たちを取材したジュニア向け本の続編。1作目と変わらない素朴さで被爆者と接し、中高生たちに理解しやすい貴重な記録にまとまった。

 テレビのニュース番組で放送したシリーズの書籍化。綾瀬さんはシリーズ開始以来、40人の原爆・戦争体験者に会ったという。本書には、いったん証言を拒みながら綾瀬さんとのやりとりで次第に口を開く、爆心地から500メートルで被爆したという女性が登場する。

 その瞬間、「目がパツーン」となって電車から引きずり出され、そばには皮が「ベロンチョ」になった幼子がいた。「あたしは、『おかあちゃんよ』言うて抱いてやった。そしたらその子はワンワンワンワン泣いて、ポトッと死んでしもうた。死んでしもうた」

 被爆直後の混乱の中で生まれ育った女性や、原爆症の親を長年支えた女性たちの証言も、丁寧に聞き取った。綾瀬さんは本書の中で「もう二度と聞けないかもしれない、とても大事なことを私は教えていただいている」と振り返る。

 岩波ジュニア新書。202ページ、994円。(上杉智己)

(2016年8月21日朝刊掲載)

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