×

ニュース

廃絶に期待 難航懸念も 広島の被爆者 核禁止 国連総会で議論へ

 核兵器の法的禁止へ、来年の交渉入りを国連総会に勧告する報告書を国連作業部会が採択したのを受け、広島の被爆者たちは20日、「廃絶の弾みになる」と期待を高めた。ただ、核兵器保有国や日本が反発を強め、難航する事態への懸念も入り交じった。

 「段階的な核軍縮ではなく、核兵器を禁止して早期になくすよう、条約の議論を本格化してほしい」。広島県被団協の佐久間邦彦理事長(71)は力を込める。日本被団協が提唱し、核兵器を禁止、廃絶する条約を求める国際署名を広島の被爆者団体も連携して進めているだけに、「核兵器なき世界」へ国際社会の流れを強める報告書とみる。

 ただ、報告書は当初、交渉入りを参加国の過半数が支持したと記しながら、「幅広い支持」に表現が後退。米国の「核の傘」の下で段階的な削減を求める各国への配慮とみられ、その一つの日本は採決で棄権した。

 佐久間理事長は「被爆国として矛盾した行動だ」と手厳しい。もう一つの県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(74)も、作業部会に出席しなかった保有国の態度に不安を募らせ、「日本が禁止条約を進める側に立ち、保有国にチェンジを求められないものか」と嘆く。

 平和首長会議(会長・松井一実広島市長)は国連総会での議論促進へ、法的禁止の重要性を書簡などで各国へ訴える考え。小溝泰義事務総長は「報告書採択は、核兵器の非人道性や使用のリスクへの認識が広まった証しで、廃絶へ重要な進展だ。核に安全保障を頼る考えが変わらない国に対し、加盟都市や被爆者団体の運動と連携し、方向転換を促す」と話す。(水川恭輔)

(2016年8月21日朝刊掲載)

年別アーカイブ