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一部拡大も選択肢 「黒い雨」地域 厚労相が検討意向

 広島原爆の投下直後に降った「黒い雨」被害の援護対象となる国指定地域の見直しで、小宮山洋子厚生労働相は1日、国会内で記者団に対し、広島県や広島市が求める約6倍の地域拡大に否定的な見方を示した。一方、一部の拡大も選択肢に今後、施策を検討する考えを表明した。

 小宮山氏は「今、設定しているところと、今回(県、市から)提起されたものとは非常に差がある」と指摘。その上で、厚労省の有識者検討会が先月29日に大筋で了承した要望地域への拡大に否定的な報告書案について「それだけ広げるのがどうかというのについて、そうではないと(見解が)出たと承知している」と述べた。

 半面、「今の範囲でいいのか、少し広げる必要があるのかというのは考える。今後ともどこまでどういう形で可能なのか検討を重ねたい」と言明した。具体的な対象地域は示さなかった。

 要望の根拠となった市などの住民調査(2008年)に基づく報告を科学的に検証した検討会は「要望地域で原爆放射線による健康影響があった根拠が見いだせない」と結論付けた。「一部拡大」の考えは示していない。黒い雨を浴びた人たちには放射線被害に対する健康不安があるとして、行政などの相談事業の提案にとどまる。

 市原爆被害対策部の大知裕部長は「厚労相の真意はよく分からないが、地域全域の指定を求めていくことに変わりはない」と話している。(岡田浩平、田中美千子)

(2012年6月2日朝刊掲載)

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