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がん闘病 被爆者の肖像 呉出身の東京芸大生 富田さん制作 71年の苦しみ表現

 71年たった今も被爆者をむしばむ核兵器とは何か―。東京芸術大4年生で現代美術を学ぶ呉市出身の富田彩友美(あゆみ)さん(21)は、広島を離れても原爆をテーマに据え、がんと闘う被爆者を描いた全身肖像画を今夏、完成させた。広島市中区鉄砲町のギャラリーブラックで23日まで展示している。

 100号の油絵の題名は「1945―2016」で、モデルは20回に及ぶがん手術を乗り越えた被爆者の児玉光雄さん(83)=南区。穏やかな表情でスーツをまといながら、がんで手術した胃や直腸など体のあちこちに、放射線による染色体の傷を抽象的に浮かび上がらせる。背景には「あの日」の光景を描き、71年の歳月を暗示させる。

 児玉さんは広島一中(現国泰寺高)1年のとき、爆心地から約870メートルの校舎で被爆。富田さんは基町高(中区)3年生のとき児玉さんの体験を聞き、惨状を再現した「原爆の絵」を制作。以来、交流を続けている。児玉さんの手術歴を知り、生涯に及ぶ放射線による苦しみを表現しようと、2年前に制作を思い立った。

 肖像画は基町高卒業生の作品展で展示。会場を訪れた児玉さんは「爆風、熱線だけでない原爆の恐ろしさによく目を向けてくれた」と喜ぶ。富田さんは「児玉さんに教わりながら、今後も原爆をテーマに描きたい」と意気込んでいる。(水川恭輔)

(2016年8月22日朝刊掲載)

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