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モントリオール ヒロシマを思う カナダの姉妹都市 平和祈念式典 広島から訪問団

 6日の「広島原爆の日」に合わせて、広島市の姉妹都市、カナダ・モントリオール市は毎年、5日夕(日本時間6日朝)に平和祈念式典を開いている。今年は、広島から民間の芸術文化親善訪問団(吉中康麿団長、16人)が参加。継承され続けている「ヒロシマへの熱い思い」を実感した。日本のポップカルチャーのイベントで伝統芸能も上演。喝采を浴び、日本文化への関心の高さも目の当たりにした。(客員編集委員・冨沢佐一)

 式典は同市の植物園内にある日本庭園で行われた。ドニ・コデール市長や門司健次郎駐カナダ日本大使、日系人、市民ら120人が出席。広島市から贈られた平和の鐘を原爆投下時刻に打ち鳴らし、広島市で松井一実市長が読み上げた平和宣言が日英仏3カ国語で披露された。訪問団は、松井市長のメッセージや千羽鶴をコデール市長に手渡し、大きな拍手を受けた。

 市長は終了後、毎年広島と同時刻に式典を開き、被爆70年の昨年は別会場で日系指揮者ケント・ナガノの指揮によるモントリオール交響楽団の演奏なども行ったと説明。昨年の参加者は4万人に達したと強調した。「ヒロシマは私にとって最優先事項。平和をベースにした都市間の交流は極めて重要だ。平和首長会議の一員として今後も努力していきたい」と述べた。

 1998年、平岡敬広島市長(当時)と姉妹都市提携に調印したピエール・ブルク元市長も出席。「訪問団に感謝している。市民同士の交流は、世界平和へ向けた相互理解と親善促進の基本だ」と指摘した。ケベック大モントリオール校のクロードイブ・シャロン政治学法学部長は「今ではモントリオールがあるケベック州だけではなくカナダ全体で、広島の悲劇は広く知られている」と話した。

 祖父母が原爆で亡くなったジャズシンガー木本いず美さん(68)=広島市東区=も訪問団の一員として式典に参列した。「平和祈念式典を毎年やってくださっているとは素晴らしいですね。コデール市長の表情の真剣さにも感動しました」と謝意を示した。

 訪問団は翌6日、モントリオール国際会議場で開催中の日本のポップカルチャーのイベントにも出演。木本さんの雅楽や箏曲、日舞、歌曲、合気道などに若者の人気が集まっていた。訪問を企画した田中勝邦さん(72)=西区=は「日本への興味を持つ若い世代が増えている今、交流をさらに進め、平和への願いを中心に日本への理解を次の世代へ継承してもらうことが大切だ」と話している。

(2016年8月22日朝刊掲載)

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