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地元自治体 不安拭えず F35B岩国配備 国が通告 県市 安全性など照会へ

 国が22日、岩国市と山口県に初めて伝えた最新鋭ステルス戦闘機F35Bの米海兵隊岩国基地への配備計画は、約4年前に米側から方針が示されながら、配備まで半年もない時期での唐突な説明となった。米国外では初の配備となる「未知の機体」であり、地元自治体にとって不安は拭えていない。県市は今後、安全性などを国に照会した上で配備への考え方を表明する。(野田華奈子)

 市役所を訪れた武井俊輔外務政務官、宮沢博行防衛政務官との会談で、福田良彦市長は「初めて国内配備される機種。自治体としても不安がある。情報については速やかに伝えてほしい」と述べ、これまで米側の情報が先行して国からの発信がほとんどなかったことへの不満をのぞかせた。

 会談後の取材に、武井政務官は「具体的内容については米国から先日報告があった」と説明。F35Bについて、宮沢政務官は「米政府が安全性、信頼性を確認して量産された」との認識を示した。岩国基地周辺の騒音については「市街地への影響は大きくない」とし、福田市長がこの日要望した騒音予測図の作成に向けて手続きを進めていることを明らかにした。

 県市は岩国基地について「今以上の基地機能強化は容認できない」との基本スタンスで、機能強化の判断基準は「周辺住民の生活環境に影響があるかどうか」とする。今後は、F35Bの安全性や運用について国に文書で照会。その回答や騒音予測図を参考に機能強化に当たるかどうかを精査し、配備への一定の判断を示す方針だ。福田市長と同席した市議会の桑原敏幸議長は会談後、全員協議会を9月の定例会後に開いて国の説明を求める考えを示した。

 岩国基地には、F35Bの配備とは別に、在日米軍再編で米海軍厚木基地(神奈川県)から空母艦載機59機の移転も2017年ごろまでに計画されている。市が過去に国防や安全保障政策に協力してきた背景も踏まえ、福田市長は「地元の負担と協力に見合うだけの適切な措置をお願いしたい」と述べ、安心安全対策や地域振興策、財政支援の充実を訴えた。

高度ステルスやデータ共有 F35Bの性能 開発など遅れに懸念も

F35B岩国配備 国が通告

 F35はレーダーに探知されにくいステルス性能が高い戦闘機だ。米海軍、空軍、海兵隊で共通の基本仕様とするため開発された。複数の目標を探知できる高性能レーダーなどを搭載するほか、機体が得たさまざまなデータを陸海空の部隊と共有できるという。

 昨年7月に3機種のトップを切って海兵隊仕様のF35Bが、実戦配備を可能にする「初期運用能力」を獲得した。同機種は垂直離着陸でき、強襲揚陸艦での運用も想定している。この日の国側の説明では、これまで死亡事故などの重大事故は発生していないという。

 日本への配備はアジア太平洋地域を重視する米国の戦略「リバランス政策」の一環。軍備拡大の傾向が目立つ中国、事実上の弾道ミサイルや核開発を進める北朝鮮を念頭に抑止力強化の狙いがあるとみられる。

 一方で、ソフトウエアに問題が見つかり、開発や機能更新の遅れを懸念する声も。開発主体は米ロッキード・マーチン社で、米、英国、イタリアなど9カ国が開発に携わった。F35Aは空軍仕様、F35Cは海軍仕様で空母に搭載できる。

 防衛省は航空自衛隊のF4戦闘機の後継機として、F35A42機の購入を進めており、2017年度予算案には6機分約1千億円を盛り込む方針が明らかになっている。(藤田智)

(2016年8月23日朝刊掲載)

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