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岩国基地埋め立て 取り消し請求を却下

 岩国市の米海兵隊岩国基地の滑走路沖合移設をめぐり、基地周辺の住民が「当初目的を大きく逸脱している」として県知事の埋め立て承認取り消しなどを求めた訴訟の判決が6日、山口地裁であり、山本善彦裁判長は「原告の訴えには利益がない」として請求を却下した。

 国事業の沖合移設をめぐる公有水面の埋め立ては、騒音軽減や墜落事故の危険回避を目的に県知事が1996年に承認した。しかし、日米両政府が2006年、艦載機59機を厚木基地(神奈川県)から岩国基地に移転することで合意。知事は08年、一部地域で騒音が増大する変更申請を承認していた。

 原告は「(埋め立てが)当初の目的を大きく逸脱し、基地機能が強化された。地元の意見を聞かず、県の内部協議だけで知事が変更申請を承認したのは違法」と訴えていた。

 山本裁判長は「埋め立て工事は完了し、処分を取り消したとしても国に原状回復を求めることは不可能」としたうえで「知事の承認権限は埋め立て地に設置される施設の監督規制にまでは及ばない。原告の訴えに利益は存在しない」と判決理由を述べた。

 判決後に会見した山田延広弁護団長は「埋め立て自体が違法なのかどうか、当初の目的に寄与しているのかなど実質的な判断をきちんとしてほしかった」と強調。控訴については「現段階では白紙」とした。県は「詳細はこれから確認するが県の主張が認められたのではと思っている」とコメントを出した。(藤田龍治)

司法「艦載機」判断せず 岩国基地埋め立て取り消し請求却下 原告住民に無念さ

 「不当な判決だ」。米海兵隊岩国基地(岩国市)の滑走路沖合移設をめぐり、県の埋め立て承認処分取り消しなどの請求を却下した6日の山口地裁判決。訴訟を通じ、原告住民たちは米軍再編に伴う空母艦載機移転に司法がどう言及するか期待していたが、訴えを却下する判断に無念さをにじませた。

 原告側は判決後に県弁護士会館(山口市)で報告集会。原告団長で岩国市議の田村順玄さん(66)は「沖合移設が艦載機の受け皿となったことについて、司法の場で判断されなかったことは残念」と肩を落とした。

 ただ判決は艦載機が移転した場合、騒音軽減が図られない可能性も指摘。山田延広弁護団長は「騒音軽減に疑問を持っていることは認めている」とした。

 国は3月、米軍住宅用地となる愛宕山地域開発事業跡地(岩国市)を購入。艦載機移転の受け皿づくりは2014年を目標に着々と進む。

 愛宕山跡地の元地権者たちが、国に事業認可取り消し処分の無効を求めている訴訟の原告団長岡村寛さん(68)は「愛宕山の訴訟に関しては踏み込んだ判断をしてほしい」と話す。

 一方、基地では岩国錦帯橋空港(愛称)の本年度開港に向けた整備も進む。艦載機移転を容認する市民団体「岩国の明るい未来を創る会」の原田俊一会長(79)は「約2500億円かけた工事の原状回復はあり得ない。当然の結果として区切りがついた」と判決を評価。「これで無事開港できる。地域の活性化につながる」と述べた。(酒井亨、藤田龍治)

(2012年6月7日朝刊掲載)

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