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核兵器廃絶へ連携誓う 宗教者平和会議 東京 11ヵ国から参集 機運盛り上げに力

 90カ国以上にネットワークを持つ、超宗派の世界宗教者平和会議(WCRP)が、核兵器廃絶を目指した集いを活発に開いている。昨年8月の広島市、11月の長崎市に続いて、今月初めには東京都内で「核兵器廃絶に向けた国際特別セッション」を開き、連携強化を声明で確認した。取り組みは、核兵器禁止条約の実現に向けた世界的な機運盛り上げに、宗教界も役立とうとの思いからだ。(桜井邦彦)

 セッションは、核兵器の使用・威嚇を「一般的に国際法違反」とした国際司法裁判所(ICJ)の勧告的意見からことしで20年になるタイミングに合わせた。東京都渋谷区の国連大学で2、3日にあり、11カ国から宗教者や平和活動家たち約80人が集った。初日は、関係者で廃絶に向けた道筋を議論し、公開された2日目は、高校生や一般市民約60人も参加した。

 マハトマ・ガンジーの孫であるエラ・ガンジーさん(76)=南アフリカ=は、宗教者であり平和活動家でもある視点から、「ガンジーが遺産として残した非暴力の行動を理解している人が少ない」と現状を危惧。「非暴力で平和な手段による抵抗のほうが優れた武器だ」と訴えた。

宗教間の同盟必要

 世界で絶えない紛争について、「宗教と暴力が絡み合ってしまっているのが現実」と警鐘を鳴らしたのはカトリック信徒の国際団体「聖エジディオ共同体」(イタリア)のアルベルト・クワトルッチ事務局長(63)。「核軍縮で効果を上げるには宗教間の同盟が必要で、世界を変えるツールとして宗教が使われなければならない」と説いた。

 議論では、秋葉忠利前広島市長(73)がオバマ米大統領の広島訪問の意義を解説。日本被団協の田中熙巳事務局長(84)は「原爆は悪魔の凶器」と主張し、「宗教は人道を支えていく上での大きな規範」と宗教者への期待感を表した。長崎から参加した高校生平和大使も被爆3世としてスピーチし、祖父の悲願である核廃絶への思いを語った。

 1996年の勧告的意見に大きな役割を果たしたICJ元判事、クリストファー・ウィラマントリー氏(89)は「全宗教が戦争を非難し、非人道的な大量破壊兵器の使用が宗教的規範を壊してしまうことを示して」とメッセージを寄せた。

 最後に採択した声明文は「無差別性を有する大量破壊兵器としての核兵器は本来的に邪悪」と批判。廃絶に向けて、市民や政府関係者たちとの効果的なパートナーシップ構築への決意を盛り込んだ。参加者が各国で広めるほか、WCRP日本委員会は日本政府に届ける予定。

140ヵ国で署名活動

 70年に発足したWCRPは、国際委員会の本部を米ニューヨークに置き、仏教、キリスト教、イスラム教、ヒンズー教など多様な宗教者が加盟。軍縮のほか、難民支援や環境保護などの問題に取り組む。

 なかでも、核兵器廃絶はWCRPが最も重視している課題の一つ。2009、10年には、青年宗教者を中心に核兵器廃絶や全世界の軍事費10%削減などを目指す署名活動を展開。140カ国で2千万人以上の署名が集まり、国連に提出した。

 戦後70年が過ぎ、「オバマ米大統領が広島を訪問する一方、被爆者が高齢化してきた。核兵器廃絶に向けた動きは今が正念場」(WCRP日本委員会)として、機運を高める取り組みに力を注ぐ。昨年は8月6日に広島で超宗派のシンポジウム、11月には長崎市内で科学者との対話集会を開いた。

 天台宗の元宗務総長でWCRP日本委員会の杉谷義純理事長(73)は記者会見で、「日本は核の傘に入っているから、核兵器廃絶に消極的と言われている」と述べ、核兵器禁止条約締結に向けて日本政府に何らかの働きかけをしていく考えを示した。

(2016年8月29日朝刊掲載)

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