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社説・コラム

社説 アフリカと日本 信頼でつながる関係を

 現在約10億人の人口が2050年には25億人になり、世界の4人に1人を占める。アフリカ大陸のことだ。日本政府が主導するアフリカ開発会議(TICAD)が閉幕した。日本らしい「ソフトパワー」で諸国の成長を後押ししたい。

 6回目のTICADはケニアが会場で、初めて日本国外での開催となった。経済成長と人口の増加で「最後の巨大市場」と注視されるアフリカ。その一方でテロや武力紛争の危険性、感染症の流行などの懸念を抱え、日本の民間企業が進出を尻込みする要因となってきた。

 会議では「ナイロビ宣言」が採択された。テロや武力紛争を生み出さない安定した社会に向けて、教育や雇用などの面で若者や女性を支援すること、天然資源への依存から産業の多角化や工業化の推進という経済構造の転換などを表明した。

 TICADは日本とアフリカの関係構築のため1993年に初めて開催し、5年置きに東京や横浜で開かれてきた。今回からはアフリカ側の意向で日本とアフリカの交互開催となる。アフリカ開発協議では先駆的存在であることを、広く世界に知らしめたいところだろう。

 会議の主要テーマは、当初は開発支援だったが、貿易、投資などビジネス色が強まっている。サハラ砂漠以南の地域は14年まで5%以上の成長率を維持していたが、最近は資源価格の下落で成長率が鈍化している。ただ日本の官民でつくる円卓会議の提言は「アフリカ諸国はビジネス機会が拡大し、日本企業にとって中長期的な重要性は変わらない」と分析する。

 この市場を狙い、各国はしのぎを削っている。とりわけ存在感を増すのは中国だ。昨年末に南アフリカで「中国アフリカ協力フォーラム」首脳会合を開き、資源だけでなくインフラ整備や農業近代化へ支援を表明している。「量」では日本が出遅れている感は否めない。

 だが日本がこれまで示してきた独自性も重要だろう。一方的な開発支援ではなく、まずアフリカ諸国の自助努力を重視し、国連や世界銀行などとの共催で幅広いパートナーシップを構築する場としてきたことだ。その理念に従って一過性に終わらない枠組みを確立したい。

 特に地域の安定化には地道な取り組みが求められる。ナイジェリアのイスラム過激派ボコ・ハラム、ソマリアの過激派アルシャバーブなどによるテロや不安定な政治情勢によって企業が事業を縮小、撤退し、新規事業を控える例がある。

 感染症も深刻である。ナイロビ宣言はエボラ出血熱の教訓を踏まえ、流行を防ぐための保健システム構築への決意を表明した。具体化を急ぎたい。

 貧困や深刻な格差といった課題も依然として残る。30年までに極度の貧困や飢餓を撲滅することなどを掲げた国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けて、取り組みをより強化したい。

 国連安全保障理事会の常任理事国入りを目指す日本にとっては50カ国以上を抱えるアフリカは安保理改革に向けた「票田」だ。安倍晋三首相も「安保理改革こそ共通の目標だ」と位置付けた。信頼感でつながる関係を各国と築く必要があることは、言うまでもない。

(2016年8月30日朝刊掲載)

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