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「回天」青年の思い託す 周南市教委に遺品寄贈

 人間魚雷「回天」の搭乗員で戦死した近藤和彦さん(享年21歳)のおいの井上克昌さん(67)=名古屋市=が8日、近藤さんの遺書や軍服、写真など15点を周南市教委に寄贈した。市教委は、基地のあった同市大津島の回天記念館で展示、保存する。

 近藤さんは回天の第1陣として1944年11月8日に大津島を出撃し、12日後、北太平洋のパラオで攻撃を受け戦死した。遺書は姉の井上美和子さん(2009年に89歳で死去)宛て。美和子さんが保管していた遺書などの遺品を、同居していた長男の克昌さんが受け継いでいた。

 遺書は、亡くなった母親に代わり養育してくれた美和子さんに感謝し「此(これ)に報ゆるは(中略)与へられたる任務を完遂するより外(ほか)何もありません」と墨書でつづる。当時、美和子さんは克昌さんを身ごもっており「姉上の子には必ず私の心を継がしめられむ事を最後に御願ひす」と結ぶ。

 市教委を訪れた克昌さんは村田正樹教育長に遺品を手渡し「叔父は国と家族を守りたい一心だったと思う。大津島での追悼式に毎年参加した母も、遺品を後世に伝えてほしいと願っているだろう」と話した。村田教育長は「亡くなった人を祈り伝えるのが私たちの役目」と謝辞を述べた。

 遺品の寄贈は本年度は5月に続いて2件目。市教委文化スポーツ課は「寄贈は例年1件あるかないか。遺族が高齢化し、公的施設に託す気持ちが強まっているのではないか」と受け止めている。(岩崎秀史)

(2012年6月9日朝刊掲載)

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