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オスプレイ先行搬入 「説明聞き可否判断」

 日米両政府が垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを米軍普天間飛行場(沖縄県)に配備する前に米海兵隊岩国基地(岩国市)に先行搬入し、安全確認する方針を固めたことについて、山口県の二井関成知事と岩国市の福田良彦市長は9日、政府から具体的な説明を11日に聞いた上で、受け入れの可否を判断する考えを示した。

 二井知事は9日朝、取材に対し「具体的な話を聞いた上で判断をしたい」。福田市長も同日朝、「詳細は聞いていない。政府の説明を聞いてから対応を考える」と答えた。

 政府は神風英男防衛政務官が11日に県と市を訪ね、方針を説明する。県は、騒音や安全面など基地周辺住民の生活環境が悪化するような基地機能の強化は容認できない▽市の意向を尊重する―など基本スタンスに照らし、対応を検討するとみられる。

 沖縄配備に先立ち、オスプレイを岩国基地に一時駐機する計画は今年3月上旬にも浮上していた。その際は、二井知事、福田市長とも「現時点で反対」という見解をそろって表明。岩国基地周辺の山口県和木、周防大島町長を含めた協議でも、反対する姿勢を確認していた。

 地元の反対で計画は立ち消えになったとみられたが、今回、蒸し返された格好。国は8日、県や市が早期の開港を求めていた岩国錦帯橋空港(愛称)を12月13日に開港する方針を示したばかり。「アメとムチ」の対応として今後、地元では反発も強まりそうだ。(金刺大五、酒井亨)

オスプレイ岩国先行搬入 「アメとムチ」 地元割れる

 米軍普天間飛行場(沖縄県)に配備予定の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを、米海兵隊岩国基地に先行搬入する計画を受け、地元岩国市や周辺では9日、国に抗議文を送るなど反発が広がる一方、一時駐機を容認する声も聞かれた。岩国錦帯橋空港(愛称)を12月13日に開港する方針を示すと同時の「アメとムチ」のようなタイミングで、沖縄とも絡む問題が岩国に突き付けられた形だ。(酒井亨、大村隆、堀晋也、村上和生)

反対派 「安全無視」と抗議文 」

容認派 「一時的 やむを得ず」

 オスプレイは開発段階で墜落事故が相次ぎ、4月にはモロッコで墜落し米兵4人が死傷した。基地反対派の「住民投票の成果を活かす岩国市民の会」(大川清代表)はこの日、「安心安全を全く無視している」などと一時駐機の撤回を求める野田佳彦首相と森本敏防衛相宛ての抗議文をファクスで送った。「岩国基地の拡張・強化に反対する広島県西部住民の会」の坂本千尋事務局長(59)は「住民の安全を脅かすような機体は上空の通過すら許されない」と憤った。

 常駐化への懸念も出た。岩国基地の機能強化に反対する田村順玄岩国市議(66)は「滑走路の沖合移設で受け皿は整っている。一時的でなく、沖縄の基地と併用の形で常時飛来する可能性が高い」と警戒を強める。

 一方、一時駐機を容認する声も聞かれた。米軍再編に協力姿勢の市議21人でつくる「岩国基地問題に関する議員連盟」の桑原敏幸会長(64)は「一時的な受け入れなら負担増にはならない。国防を沖縄に押し付けず協力するべきだ」と言う。

 空母艦載機移転を容認する市民団体「岩国の明るい未来を創る会」の原田俊一会長(79)も「常駐せず、試験飛行を市街地上空でしない」との条件で「先行搬入はやむを得ない」とした。

 一時駐機の判断は、岩国、沖縄双方に影響する。軍事評論家の前田哲男さん(73)は「10日に沖縄県議選がある。反対姿勢の民意が強ければ、8月の普天間配備は難しくなる」と、岩国でのなし崩し的な常駐化の可能性を指摘。沖縄国際大経済学部(基地経済論)の前泊博盛教授(51)は「岩国が受け入れたら沖縄への圧力も増すことになる。沖縄にとって岩国の姿勢は大変重要」と強調した。

(2012年6月10日朝刊掲載)

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