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スペインから千羽鶴 日本人子孫ハポンさん持参 広島

 17世紀にスペイン南部のコリア・デル・リオ市に渡った日本人の子孫という、スペイン日本支倉(はせくら)常長(つねなが)協会会長のフアン・フランシスコ・ハポンさん(47)=同市=が初めて被爆地広島を訪れ、原爆の子の像(中区)に折り鶴をささげた。協会の呼び掛けで、子どもを含む現地の約500人が折った千羽。平和や両国の団結、希望を鶴に託した。

 同市には、スペイン語で「日本」を意味する「ハポン」姓を名乗る人が約650人住む。仙台藩主の伊達政宗が1613年、欧州に派遣した支倉常長の使節団のうち数人が残って結婚、定住した子孫が、「ハポン」姓の人たちだという。

 そうした人でつくる協会は祖先の住んでいた東北地方が2011年の東日本大震災で被災したため、支援に尽力。その縁で知り合った日本人の提案で、原爆の子の像にささげられた折り鶴の再生紙で鶴を折り、広島に持ってくることにした。折り方などは、セビリアに住む日本人女性に教えてもらったが、慣れないことでみんな苦労した。その女性は完成前に82歳で亡くなったという。

 一人で広島を訪れたハポンさんは、支援者らの協力で原爆の子の像に千羽鶴を献じた。「手伝ってくれた人たちを思いながら鶴をささげた。感動して涙がにじんできた」と話していた。

 原爆の被害についてスペインでは高校で習うという。「人間による人間の大量虐殺だ。狂気としか言いようがない。核兵器は持っていてはいけない。広島で見て自分なりに感じた原爆の恐ろしさは、帰国して伝えていきたい」と述べた。

 また、今年5月のオバマ米大統領の広島訪問については「非常に重要だが、核兵器を持たないようにするなど、行動が伴わないと意味がない」と行動に移すことを望んでいた。

(2016年9月5日朝刊掲載)

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