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核先制不使用見送り公算大 ヒロシマ怒り・落胆 被爆者「納得できぬ」

 オバマ米政権が核兵器の先制不使用政策の採用を見送る公算が大きいと米紙で報じられたのを受け、被爆地広島の被爆者や若者たちに7日、怒りや落胆が広がった。(水川恭輔)

 「核兵器は絶対悪。納得がいかない」。広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(74)は、松井一実市長へ渡米報告に訪れた広島市役所で、怒りをにじませた。

 先月に市民団体の招きでワシントンなどで被爆の実態について話し、ホワイトハウス前で反核団体と核兵器廃絶を訴えた。「米国の市民レベルでは、核兵器は駄目だとの声が広がっとる。米政権はその声をもっと真剣に受け止めて、政策を考えるべきだ」

 核兵器なき世界を追求する勇気を持たなければならない―。オバマ氏は5月、平和記念公園(中区)での「ヒロシマ演説」でそう訴えた。聴衆として招かれた盈進高2年作原愛理さん(17)=府中市=は「オバマ氏は広島で命の尊厳を考え、廃絶へ行動する責任感を抱いたはずだ。先制不使用にも期待していた」と強調。「やりたくても、周りに阻まれているのだとしたら歯がゆい」とこぼした。

 実際、別の米紙で先月中旬、安倍晋三首相が先制不使用に反対の意向を米軍側に伝えたとも報じられた。もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(71)は「日本政府の姿勢は被爆者の思いと懸け離れている。オバマ氏には被爆者の思いをくんで先制不使用を決断してほしかった」と訴えた。

 「オバマ氏が新たな政策を検討しても『核の傘』に依存する日本などが足を引っ張っているように映る」。市立大広島平和研究所の水本和実副所長も指摘する。「先制不使用は核軍縮に向けた他の保有国との信頼醸成のメッセージになり得、北朝鮮の非核化にも生かせた。逆に見送ることで北朝鮮との緊張を高めかねない」と懸念している。

(2016年9月8日朝刊掲載)

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