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旧満州入植体験 苦難の日々回想 広島県世羅の冨貞さん 30日初証言

 世羅郡出身者たちが中心になって旧満州(中国東北部)に入植した「第二世羅村」に先遣隊員として入った冨貞亘さん(91)=世羅町小国=が30日、初めて当時の体験を話す。敗戦から帰国までの8年間の生活などに触れる。せらにしタウンセンター(小国)である証言会で壇上に立つ。

 冨貞さんは1942年ごろ満州に渡った。稲作を広める水田係を担当。44年12月に兵士として召集され、旧ソ連との国境近くで終戦を迎えた。一時は捕まってシベリアの炭鉱で強制労働をさせられていたが脱走。逃走中に足を銃弾で負傷しながらも中国側に戻った。「食べ物も飲み物もなく、空腹と喉の渇きは今も覚えている」と振り返る。

 その後、中国人から食事面の支援を受け、木の伐採や、牛にてい鉄を付ける作業をして生活していたという。日本に帰国できたのは53年4月だった。

 「つらく、惨めと思っていたので自分の子どもにも話していなかった」という。戦争体験の聞き取りを続ける山下義心さん(80)=同=から依頼を受け、話す決心をした。「満州の史実を知る一助になれば」と話す。

 証言会では、第二世羅村の団長の手記なども紹介する。午後1時半から。無料。タウンセンターTel0847(37)2115。(与倉康広)

(2016年9月9日朝刊掲載)

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