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オスプレイ岩国先行搬入 知事・市長が回答留保

 防衛省の神風(じんぷう)英男政務官は11日、山口県の二井関成知事と岩国市の福田良彦市長を訪ね、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを米軍普天間飛行場(沖縄県)に配備する前に米海兵隊岩国基地に先行搬入する方針を伝え、協力を要請した。二井知事、福田市長とも、安全性の確認を理由に回答を留保した。

 神風政務官は、岩国への駐機は12機が10日間から2週間程度▽4月のモロッコでの墜落事故は、米側から「機体の安全性に問題はない」と報告を受けた▽試験飛行は市街地上空で実施しない―などと県市に説明。「岩国基地での試験飛行は沖縄の不安解消にもつながる」と理解を求めた。

 会談後、二井知事は「基地機能強化は中長期的な部隊配備などに対する判断。今回は一時的な基地の運用」として、機能強化に当たらないとの認識を示した。福田市長も機能強化ではないとした上で「現時点では不安要素が払拭(ふっしょく)できていないので了解できない。(結論まで)あまり多くの時間はかけない」とした。

 関係者によると、米海兵隊が7月20日ごろにオスプレイを岩国基地に搬入し組み立て。試験飛行で安全性を確認後、8月初旬にも普天間に正式配備することを目指している。

 オスプレイを岩国基地に一時駐機する案は3月にも浮上。その際には二井知事、福田市長とも「現時点では反対」という見解を表明していた。(酒井亨、金刺大五)

「県・市の理解求める」 官房長官

 米海兵隊岩国基地(岩国市)への垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの先行搬入計画について、藤村修官房長官は11日の定例会見で、山口県や岩国市の理解を求めていく考えを強調した。

 藤村氏は米軍普天間飛行場への配備前の岩国基地への陸揚げなどに関し、防衛省が地元側と事務的な調整を進めていたと説明。「今後ともさまざまな理解を求める努力をする」と表明した。

 さらに、岩国基地に搬入したとしても、普天間への配備に反対する沖縄県側の理解が得られるかどうか、との問いには「先の話だ。それぞれ地元の理解を得ていく態度は変わりない」と答えた。(岡田浩平)


一時駐機で済まぬ恐れ 移動困難か 沖縄の反対根強く

 米海兵隊垂直離着陸輸送機MV22オスプレイは普天間飛行場(沖縄県)への直接配備か、それとも岩国基地(岩国市)への先行搬入か。岩国先行搬入との方針を固めた国は11日、市と山口県に協力を申し入れた。沖縄ではしかし、10日の県議選がオスプレイ配備への反対を維持する結果となった。仮に岩国が容認すれば沖縄配備の後押しになるが、逆に「沖縄に運べず、一時駐機では済まなくなる」との懸念も出ている。

 オスプレイの岩国への一時駐機案が浮上したのは、ことし3月だった。反対の強い沖縄への配慮とみられるが、このとき、市県とも「反対」で一致、国は沖縄への直接配備に傾いたが、沖縄が反発し、国はこの日、正式に市県に先行搬入を申し入れた。

 神風(じんぷう)英男防衛政務官は市県に対し、「あくまで陸揚げ施設として使わせていただく」「市街地上空の飛行はない」と強調した。

市県とも態度を留保したが、最大の懸念はオスプレイの安全性。さらに地元には「本当に一時的な運用なのか」といった不安も強い。

 沖縄県議選の結果について沖縄国際大の鎌田隆名誉教授(国際関係論)は「県内では駐機反対の姿勢が強く、今回の選挙でその民意がさらに明確になった。(オスプレイを)沖縄に持ってくるのは難しい」とみている。(大村隆、堀晋也)

二井知事 私の責任で対応

福田市長 判断 時間かけぬ

一問一答

 11日の神風英男防衛政務官との会談後、二井関成知事と福田良彦市長はそれぞれ、山口県庁と岩国市役所で取材に応じた。主なやりとりは次の通り。

 ■二井知事

 ―今回の件は岩国基地の機能強化に当たりませんか。
 機能強化は中長期的な部隊配備などに対する判断。今回は10日から2週間程度。一時的な基地の運用だ。

 ―国は岩国で安全を確認したい方針です。
 沖縄との関係は政府がしっかりと理解を求めていく問題。県民の安全性について岩国市と協議し、結論を出したい。

 ―在任中に判断されますか。
 私の責任で対応する。

 ■福田市長

 ―説明不十分な点はありませんでしたか。
 搬入は一時的であり、基地機能の強化には当たらないと理解した。モロッコでの事故は人為的ミスと説明を受けた。が、すべての不安を拭えたわけではい。きょうの段階では了解するわけにいかないと結論した。

 ―岩国錦帯橋空港(愛称)の開港日発表とほぼ重なりました。
 残念だ。国から(空港開港と先行搬入は)まったく因果関係はなく、日米間の協議の中でこの時期になったと説明を受けた。

 ―いつまでに判断しますか。
 あまり時間はかけない。議会や県と協議し、市民の安心安全を確保する観点から判断したい。(金刺大五、大村隆)

(2012年6月12日朝刊掲載)

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