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社説・コラム

北朝鮮5回目核実験 広島平和研・孫賢鎮准教授に聞く 核先制不使用の採用遠のく

 韓国統一省の専門官を務めた広島市立大広島平和研究所の孫賢鎮(ソン・ヒョンジン)准教授(北朝鮮問題)に、北朝鮮の5回目の核実験の狙いと、核軍縮への影響を聞いた。(水川恭輔)

 金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、5月の党大会で核開発と経済建設を同時に進める「並進路線」を掲げた。確実に実行していると国内外に早く誇示するため、1月の前回核実験から、わずか8カ月の間隔で踏み切ったのだろう。

 国内の態勢引き締めもある。前回の実験後、国連安全保障理事会決議で金融制裁が強まり、エリート層の脱北が起きているためだ。対外的には、中国での20カ国・地域(G20)首脳会合で北朝鮮の核・ミサイル問題が取り上げられたことへの反発もあるとみられる。

 オバマ米大統領の新たな核政策の検討は厳しさが増すだろう。核兵器の先制不使用政策の採用を見送る公算だと伝えられているが、今回の実験で一層遠のくとみられる。韓国で、北朝鮮に対抗するための自国の核兵器開発の声が高まりかねない。米国はそれを止めるため、これまで通りの「核の傘」を差し出すはずだ。

 実験が、「核弾頭」と発表された点も重要だ。米国まで届く核弾道ミサイルが実現する可能性があるとして、米国民の不安が広がるだろう。オバマ政権は「戦略的忍耐」と言って北朝鮮に具体的変化がなければ交渉に応じない姿勢をとってきたが、次期政権が路線を変更して自ら手を打たざるを得ないのではないか。

 考えられる米国の次の一手は、対話か、核による威嚇も含めた軍事的な圧力強化かのどちらかだ。被爆国日本は対話の道筋を促進し、北朝鮮を話し合いに誘導する方策を練るべきだ。ヒロシマから北東アジアの平和に向けた対話の枠組みを提言してもいい。信頼醸成を重ね、長い目で非核化を求めていくしかない。(談)

(2016年9月10日朝刊掲載)

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